日本はドイツのように真剣に財政再建に取り組まなければ未来はない?

ドイツの国会議事堂政治・行政

ドイツ政府が財政再建に成功し、2015年度には歳入と歳出をほぼ均衡化し、旧西ドイツ時代も含め46年ぶりに新規国債の発行がゼロを実現しました。一方、日本は1,000兆円を超える膨大な借金を抱えたまま、毎年新規国債の発行し続けているのが現状です。

その結果、現在の政府債務のGDP比は、見事に財政再建に成功したドイツが約70%、世界最大の債務国である米国が約100%、そして安倍政権の元で長年財政再建を先送りしてきた日本は断トツの世界一で約250%となっています。人によっては、「日本は借金も多い代わりに資産も多いので問題ない」という意見もありますが、自分がいろいろ調べた結果では「本当のところは曖昧」というのが結論です。

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そこで今回は、ドイツがいかにして財政再建を成し遂げたのかを見てみました。

主要国の債務残高と財政収支の推移とその現状

もともとドイツは、1990年10月の東西ドイツ統一後、旧東ドイツ地域支援のため、インフラ環境の整備や失業手当等のための財政負担が生じ、財政赤字は1995年にはGDP比9.7%まで拡大していました。現在の日本の財政赤字がGDP比4.0%であることを考えると無茶苦茶ひどい状況だったのです。

下のグラフは、ここ15年間の主要国の「対GDP比の債務残高」の推移です。(出典:財務省

主要国の「対GDP比の債務残高」推移

ドイツはここ10年余りで大幅に債務残高が減っていますね。一方、日本は燦燦たるありさまですね。

次に参考までに、ここ15年間の主要国の「対GDP比の財政収支」を見てみると・・・(出典:財務省)、

主要国の「対GDP比の財政収支」

各国とも2008年の「リーマンショック」時に大幅に財政収支が悪化していますが、ドイツは非常に優等生でこの時ですら、‐4.0%程度で押さえています。その後、ドイツは急速に赤字を減らし、ここ数年は黒字で安定しています。ほんと凄いですねぇ。一方で、日本は相変わらず財政赤字を続け、債務を増やしつ続けているのです。

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ドイツの財政再建スタートはシュレーダー首相時代

では、ドイツはどのようにして財政再建を実現したのでしょうか?ドイツの取った主要な財政再建策を見てみます。

一般的に家の家計を立て直すには「収入を増やすか、支出を減らすか」しかありませんが、国の財政でも同じで「歳入を増やすか、歳出を減らすか」しかありません。実はドイツではあてにならない「歳入増策」ではなく、徹底的な「歳出削減策」をとったのです。これには国民の痛みを伴うものも多々ありました。そ
れなのにドイツが財政再建に成功した裏には、「ドイツ国民自体の借金を嫌い」が根底にあったと言われています。ちなみにドイツ語では、「債務」と「罪」は同じ単語(schuld)が使われているそうです。

このドイツの政策は、安倍さんの「経済活性化→税収増→財政再建」という考え方(=国民の痛みが伴わない)の対極にあるものですね。みなさんも感じているように、日本経済は安倍政権があれだけお金をばらまいたのに一向に活性化していませんし、債務残高は増える一方です。

話を戻しますが、東西統一後の不況と混乱で財政赤字に喘ぐドイツに「財政再建」という大手術に取り組んだのは、1998年に就任したシュレーダー首相です。彼は国民に「ドイツの将来のためには緊縮財政による早急な財政再建の必要性」を納得させ、国民が痛みを伴ういくつもの策を断行したのです。以下はその主なものです。

ドイツのシュレーダー首相

1.労働市場改革

財政圧迫の大きな原因であった失業給付について、支給期間の大幅な短縮(最長32ヶ月→原則12ヶ月)や就労支援を拒否した場合(ハローワークが紹介する働き口を二度断る)の給付額カット、解雇・有期雇用制限の緩和・撤廃を実施した。結果的に失業率は、2000年の8.0%から2015年には4.6%にまで低下し、税収も増加した。

2.年金改革

労働者の賃金に定率で賦課されていた社会保険料を削減すると共に公的年金の給付水準は引き下げた。同時に私的年金制度の導入等を行い、引下げ分を補えるようにした。

3.医療制度改革

従来自己負担のなかった外来診療診察料を導入し、過剰診療の防止&医療コストの削減を図った。さらに薬の処方 1回につき 5~10ユーロ、入院 1日につき 10ユーロ等の消費者の定額負担制度を導入した。

このような財政再建を次々に実施することで、徐々にではあるものの確実にドイツの財政はよくなっていったのです。2005年にはキリスト教民主同盟のメルケル首相へと政権が交代したが、シュレーダー前首相が行った改革は維持され、財政再建策は引き継がれました。

メルケル政権が行った財政改革

その後、シュレーダー前首相が実施した改革の効果で財政状況は改善し、2007年には一時的に一般政府財政収支が黒字になった。しかし、翌年の「リーマンショック=世界金融危機」の発生により大規模な財政対策を打たざるを得ず、財政収支も再度赤字に陥りました。しかし、メルケル政権はこの厳しい状況にも関わらず財政再建に対しては厳しいスタンスで臨み、以下のような政策を実施しました。

ドイツのメルケル首相

1.憲法改正

リーマンショック直後の2009年に、ドイツの憲法にあたる連邦基本法を改正し、連邦政府と州政府に財政収支を原則均衡させることを義務付けた。

2.歳出削減策

シュレーダー前首相の政策をさらに強化し、長期失業者への手当等の社会保障費の削減を実施した。また、公務員の1万人以上の削減や各省庁の裁量的経費の抑制、徴兵制の廃止による防衛費の抑制など徹底した経費の見直しも実施した。

3.歳入強化策

2007年に付加価値税率を16%から19%に引き上げるとともに、所得税の最高税率を42%から45%に引き上げた。また、ドイツ国内の空港から離陸する旅客に対する課税や、原子力発電所に対する課税等の新たな税の導入を実施した。

こうした政策の結果、2015年には財政は再び黒字化し、前述の通りその後ここ数年は黒字で安定しています。ちなみに現在のドイツの歳入は「税収が9割」に達しており、借金に頼らずに財政を運営できる体制を整えています。一方、日本はというと(2018年度)・・・、

税収 60.5% (所得税19.5% 、法人税12.5%、消費税18.0%、他10.6%)
●公債金 34.5%  (赤字公債28.2%、建設公債6.2% )
●その他 5.1%

とんでもない借金財政ですね。ちなみに歳出の方は、国債費が23.8%(うち債務償還費14.6%、利払費等9.2% )も占めています。

安倍元首相

なぜ、政府はこんなボロボロの状況になるまで放置しておいたのでしょうか?
まあ、少子高齢化の問題や労働力不足の問題、社会インフラ老朽化の問題も同じようにボロボロの状況になるまできっと抜本的な対策は打たないんでしょうね。

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