日本社会の本当の最重要課題は「少子化」対策では?

政治・行政

毎日のようにマスコミで取り上げられる「少子高齢化問題」。確かに「子どもが少なく、高齢者ばかりの世の中」になってゆき、様々な社会問題が噴出してくるでしょう。
しかし、「少子化」と「高齢化」はともに国家衰退の元凶ではありますが、この2つはその原因も対策も全く異なる別物です。

そこで今回は、「少子化」に焦点を当ていろいろと調べてみました。

歯止めがかかるどころか、どんどん進行している「少子化」

この春の総務省の公表によると、2019年4月1日現在の子どもの数(15歳未満人口)は過去最低の1,533万人で実に1981年から38年連続で減少だそうです。また全人口に占める子どもの割合も12.1%とこちらは1974年から45年連続の低下となっているそうです。

子どもの数(15歳未満人口)と子どもの割合の推移出典:総務省HP

これって「大人9人に対して子どもはたった1人」しかいないと言うことですよ。マスコミはすぐ「少子化、大変だ!」と騒ぎ立てるので、自分たちも聞きなれてしまい「危機感もすっかり麻痺」してしまっています。しかし、上記のように冷静に見てみると・・・驚きませんか?
50年前までは、子どもの割合は25%ほどで4人に1人は子どもだったのに・・・。

では、この子どもの割合を都道府県別にみてみると、

<高いベスト5>
沖縄県 17.0%
滋賀県 14.0%
佐賀県 13.6%
宮崎県 13.4%
熊本県 13.4%

<低いワースト5>
秋田県 10.0%
青森県 10.8%
北海道 10.9%
高知県 11.2%
東京都 11.2%

全体的に見て「西高東低」の傾向はあるものの、あまり大きな差ではないですね。昔は、「田舎は子どもが多く、都会は少ない」のが普通でしたが、今では日本の「少子化」傾向は全国に渡っているのですね。

次に、世界的にみると日本の少子化がどのレベルにあるのか見てみました。下の表は、国連人口統計年鑑(2016年版)のもので、人口4000万人以上の国の子どもの割合を比較したものです。

予想通り、「日本はワースト1」です。自分がやや驚いたのは、「イギリス」や「フランス」が「米国」とあまり変わらないという水準という点と「韓国」が日本と同じぐらい「少子化」が進んでいる点です。

ここまでざっーとありますが、日本の少子化の現状を見てきましたが、皆さんはどう感じましたか?

さらに進行してしまう日本の少子化

次に、今後の日本の人口構造のキーを握っている「出生数」と「出生率」について見てみました。「出生数」はその年に新たに生まれた子どもの数ですが、「出生率」は「一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均=合計特殊出生率」というものが使われています。

厚生労働省の発表によると・・・、

2018年に生まれた「子どもの数(=出生数)」は91万8397人で過去最低だそうです。この数は、戦後の第一次ベビーブーム時と比べると1/3程度しかなく、また20年前と比べても2割以上減少しています。また、「合計特殊出生率」は1.42で、2005年に最低の1.26を記録してから緩やかに回復し、ここ3年は1.4近辺で推移しています。

ここでやや不思議に感じるのは、「合計特殊出生率がある程度回復しているのに、なぜ出生数は減り続けている」のかということです。その理由はというと・・・、「出産適齢期とされる女性の人口が減ったため」だそうです。厚労省の話では、第2次ベビーブームの1971~74年に生まれた「団塊ジュニア」世代が40歳代半ばになり、出産が減っていることが影響しているそうです。
下の図は、「2017年の日本の人口ピラミッド」ですが、これを見る限り少なくともあと15年は「15歳~49歳までの女性」の数は減り続けます。ということは、よほど大きく「合計特殊出生率」をアップさせない限り、日本の子どもの数は増えないということですね。

→→→ 若者の結婚離れ進行中

こう見てくると、今さら安倍政権がどんな手を打っても、日本が少子化問題から解放されるのは20年や30年後になるということですね!・・・恐ろしや少子化問題!

早くから「少子化対策」を実施してきた欧州先進国

同じように少子化に直面したヨーロッパ諸国では、「子どもは社会が育てる」という考え方に立ち、国が率先して保育制度を充実させ、出生率の向上を成功させたそうです。
厚労省によれば、日本の人口を将来にわたって維持するには2.07の出生率が必要になるそうです。そこで、「出生率の向上に成功」した国の代表としてスウェーデンの施策例を見てみました。

社会保障制度が非常に充実していることで有名なスウェーデンですが、40年ほど前の1978年には合計特殊出生率が1.60にまで低下し、少子化が大きな社会問題となっていました。しかし、国が様々な対策を講じたため、1989年には2.0に回復したのです。そして最近は、女性の就業率が80%もありながら合計特殊出生率も1.85(2017年)となっているそうです。

出生率が向上させるためにスウェーデン政府がとった主な施策は以下の通りです。

1.各自治体は保育園への入園申込を受けてから3~4カ月以内に保育の場の提供を保障。

2.育児休暇中の両親は給与の80%が支給され、また元の職場に復帰できる権利を保障。
(日本の育児休業給付金は賃金の約5割)

3.育児休暇は両親ともに480日(土日を入れると672日)を保障、しかも子どもが8歳になるまで取得が可能。

4.幼児を持つ親は六時間勤務でもよいと法律で保障。

5.12歳未満の子どもを持つ親は、子どもが病気の時に会社を休んで看病できる看護休業を保障。(子ども1人当り年間120日間、給与の80%支給)

6.保育園の位置づけを「働く親の子どもを預かる施設」から「子どもが学習するための施設」へ変更し「就学前学校」とした。また、保育士の社会的地位も「学校の先生」と向上し給与もアップさせた。

このほか児童手当等でも、日本よりはるかに充実しています。ほんとスウェーデンは凄いですね。

また、スウェーデンと同じようにフランスやドイツなど欧州各国でも1980年ごろから少子化が大きな社会問題化しており、各国政府は早くからスウェーデンのように様々な「子育て支援施策」を打ち、合計特殊出生率アップを図っていたのです。

ちょっと古いデータになりますが、下のグラフは「家族・子育て分野への社会支出の対GDP比」の国際比較です。
これを見ると、日本政府が欧州各国に比べ「家族・子育て」に対していかに「手抜き」をしてきたかが一目瞭然です。

最後に、以前もご紹介していますが、下のグラフは日本政府が発表している「日本の将来人口構造予想」です。見ての通り、「子どもの数(15歳未満人口)」は40年後の2060年になっても減り続けているのです。

「高齢化」対策も大切だけど、日本の将来のことを考えるなら「少子化」対策の方がはるかに大切なことではないのでしょうか。「子育ては社会全体の責務」との考える欧州各国のように、安倍政権も自己満足としか思えない「憲法改正」や日本政府がほうっておいても何ら変わらない「貿易摩擦」なんかよりも、一刻も早く「少子化」対策に本腰を入れて欲しいものです。

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