よく耳にする認知症という病気やアルツハイマー病という病気ですが、いったいこの2つはどう違うのでしょうか?
今回はこの認知症とアルツハイマー病について詳しく調べてみました。
認知症はどんな病気?
まず「認知症」についてですが、厚生労働省によれば実はこの「認知症」は病名ではなく、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指しているそうです。
また以前よく使われていた痴呆症という言葉は、認知症と同義語ですが「痴呆」という言葉には「愚か」「頭の働きが鈍い」「劣っている」といったマイナスのイメージが強いため、厚生労働省が2004年に「痴呆症に代わる言葉」を公募したところ、「認知症」選ばれたそうです。それ以降、医療や介護業界では「痴呆症」という言葉は使用されず、「認知症」という言葉にとって代わられたという話です。
この認知症の症状には、記憶障害を中心とした認知症の方に必ず見られる「中核症状」と、そこに本人の性格や環境の変化などが加わって起こる「周辺症状」があります。
この周辺症状は人それぞれで異なり、また接する人や日時によっても大きく変わってくるので、認知症の人の介護を大変なものにしているそうです。
実はアルツハイマー病は認知症の代表的なタイプ
このような認知症にはいくつかの種類があり、主なものとしては、患者数が多い順にアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が挙げられます。
認知症患者うち約60%はアルツハイマー型認知症が原因で、約20%は脳血管型認知症によるものとされています。そのため、一般的に「認知症=アルツハイマー病」と勘違いしている人が多いそうです。
また、認知症はその種類によって脳内でおきている変化や変化が起こる場所などが異なり、その症状も変わってくるそうです。そこで、前述の4つの認知症の代表的なタイプについて調べてみました。
◆アルツハイマー型認知症
これは、脳細胞にアミロイドβをはじめとする老廃物が溜まり、徐々に細胞が死滅して、脳が萎縮する病気です。典型的な老化とともに発生する病気ですね。この病気では、短期記憶をつかさどる海馬が最初に萎縮するため物忘れがひどくなり、同じことを何度も聞く、簡単な計算ができなくなる、道に迷うといった症状が見られるそうです。
◆レビー小体型認知症
この患者の脳の神経細胞を顕微鏡で観察すると、レビー小体というかたまりが観察されることからその名前がつけられたそうです。几帳面な性格の人や中年期にパニック障害や鬱の傾向があった人に発症するケースが多いようです。幻視が特徴的で、歩行障害や薬剤過敏症や大声での寝言などの特徴的な症状がある一方で、短期記憶は比較的保たれている場合が多いそうですが、諸症状の個人差も大きく診断が難しいケースがあるようです。
◆脳血管性認知症
脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」などの脳血管障害などにより、その周囲の神経細胞がダメージを受けて発症します。症状はダメージを受けた部位により異なり、判断力や記憶は比較的保たれている一方、言語障害が目立ったり、意欲や自発性がなくなったり、感情の起伏が激しくなる症状が見られます。発症後も脳出血や脳梗塞の再発のたびに階段状に症状が進行することもあるそうです。
自分も52歳の時「脳出血」で倒れましたが、幸いにもこのような認知症の症状は現れませんでした。
◆前頭側頭型認知症
脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が壊れていく病気です。「ピック球」というかたまりが観察されるケースが多く、「ピック病」とも呼ばれます。芸術家や自由業、自営業の人などに多く、興奮しやすく衝動的になり、周囲に合わせられなくなります。ただこの病型は、少量の向精神薬を使うことで通常の社会生活を保つことができるようになるそうです。
また、これらの「認知症によるもの忘れ」は、「加齢によるもの忘れ」とは以下のような点で大きく異なっているそうです。
脳の萎縮は30代から始まっている!
認知症の大半を占めるアルツハイマー型認知症の原因である脳の萎縮は、恐ろしいことに30代から始まっているそうです。というのは、人は生まれてからしばらくは、脳はどんどん成長し体積も大きくなっていくのですが、通常30代くらいを境に、脳神経細胞は毎日およそ10万個も死んでいくそうです。そしてこれにより、脳全体のボリュームが小さくなっていく(=脳の萎縮)そうです。怖いですね。
この結果、脳は30代から年間平均で0.2%程度で萎縮し始め、70代になるとこの萎縮のスピードが年平均0.5%に加速し、75歳になるとだいたい30代のときの脳より1割は軽くなると言われているそうです。ただ、脳の萎縮スピードはかなりの個人差があり、また脳には強い補完性があり、脳細胞が多少減ったとしても、残った神経細胞ネットワークのつながりによって脳の機能が保持されるので、いきなり認知症になり日常生活に支障をきたすということはないそうです。それどころか、米マサチューセッツ工科大学の脳科学研究によれば、人間には脳細胞の数に依存しない「経験を積む」ことによって成長する知能があるため、一般的な記憶力・情報処理能力のピークは18歳前後であるにもかかわらず、集中力のピークは43歳、新しい情報を学び理解する能力のピークは50歳だそうです。ここ10年程で、人の脳の研究は飛躍的に進んだそうですが、ほんと人間の脳の潜在能力って凄いですね。
ますます増える認知症患者の数
下記のグラフは年齢別認知症の有症率ですが、75歳くらいになると10人に1人、95歳を超えるとなんと7~8割の方が認知症になると言われています。自分は今年60歳なり還暦を迎えましたが、認知症はまだまだ当分の間は大丈夫そうですね。ややほっとしました。
しかし世界でも例のないスピードで高齢化が進みつつある日本では、2030年は800万人、2050年には1000万人が認知症にかかると予測されています。つまり、今現在は全国民の25人に1人である認知症患者が、2050年には全国民の10人に1人が認知症患者という時代が来ることになるのです。
近年では、高齢の認知症患者の運転による交通事故が増えていますが、当の本人は事故を起したことすら全く覚えていないそうです。恐ろしいことですね。
今後ますます増加する高齢者数のことを考えると、一部の人だけでなく社会全体での認知症予防や患者対応が避けられなくなるのでしょうね。









