台風19号襲来時に多摩川と阿武隈川はどのように変化していったのか?

社会&国際問題

先週末の12日午後7時前に伊豆半島に上陸し、その後に日本列島を縦断し13日の朝方には福島県付近から太平洋に抜けた台風19号。その被害は深刻で、今日19日になってもまだ浸水したままの地域がたくさんあります。

そこで今回は、自分の自宅の近くを流れる「多摩川」と多くの個所で堤防が決壊し甚大な被害をもたらした「阿武隈川」について国土交通省のデータをもとに、この2つの一級河川の水位がどう変化したのかを調べてみました。

多摩川

多摩川は山梨県塩山市の笠取山を源流とし、その後山梨県・東京都・神奈川県を流れ東京湾に注いでいる全長138kmの大きな河川です。ただ、東京圏の一級河川なのに護岸化されていない部分が多く、1974年の台風16号による大雨では狛江市で堤防が決壊して民家19戸が流出されてしまうという被害がありました(幸いにも住民は避難したため死傷者はゼロです)。

今回の台風19号でもこの多摩川は、世田谷区の堤防が整備されていない部分から氾濫し、二子玉川駅周辺や田園調布の住宅地が浸水被害に見舞われました。下の写真は二子玉川付近の目一杯増水している多摩川です。(出典:NHK)

二子玉川付近の目一杯増水している多摩川

出典:NHK

1.日野橋水位観測所

ではまず初めに、中流域の日野市にある「日野橋水位観測所」のデータを見てみます。

多摩川日野橋水位観測所の水位データ

出典:国土交通省

多摩川日野橋水位観測所の水位変化

出典:国土交通省

上図は日野橋水位観測所付近の川の断面図で、下表は台風来襲前後(10/11-10/14)の水位データです。なお、この地域では堤防の決壊等の被害はありませんでした。

この川の断面図は10/18午後のデータですが、すでに平常時の水位に戻っています。
しかし、台風19号が来た時には10/12の朝07:00頃から水位が急上昇を始め、9時間後の16:00にははん濫注意水位2.80mを越え、その後20:00には最高水位の3.50mにまで達しています。そして、その5時間後にははん濫注意水位の2.80mまで低下しています。

この地点は、氾濫は真逃れましが、多摩川を渡る国道256号の日野橋は写真のように「ぐなぁぐなぁ」になってしまい、未だに通行止めのままです。こりゃ、当分復旧はできないだろうなぁ。

壊れそうな多摩川の日野橋

出典:iine-tachikawa.net

次は、わが家に近い大田区の「田園調布水位観測所」のデータを見てみます。

2.田園調布水位観測所

この田園調布水位観測所は、中原街道の丸子橋のすぐそばにあり、今回氾濫した二子玉川駅付近から5㎞ぐらい下流になります。

多摩川田園調布水位観測所の水位データ

出典:国土交通省

多摩川田園調布水位観測所の水位変化

出典:国土交通省

上図は田園調布水位観測所付近の川の断面図で、下表は台風来襲前後(10/11-10/14)の水位データです。なお、この地域では堤防の決壊等の被害はありませんでした。

この川の断面図は10/18午後のデータですが、すでにほぼ平常時の水位に戻っています。
しかし、台風19号が来た時には10/12の朝09:00頃から水位が急上昇を始め、7時間後の16:00にははん濫危険水位8.40mを越え、その後23:00には最高水位の10.77mにまで達しています。そして、その13時間後にやっとはん濫注意水位の6.00mまで低下しています。

この地点は、氾濫は真逃れましが、川崎側は本当にあふれる寸前まで水位が上昇しており、本当に危ないところでしたね。下の写真は当該付近の衛星写真(出典:グーグルアース)ですが、左側が川崎です。こんな住宅密集地で洪水が起こったら避難所も対応できないだろうなぁ。恐ろしい限りです。

多摩川田園調布水位観測所付近の衛星写真

出典:グーグルアース

次に、東北の阿武隈川を見てみましょう。

阿武隈川

阿武隈川は福島県西白河郡西郷村の甲子旭岳を源流とし、その後福島県、宮城県を流れ太平洋に注ぎ込む一級河川です。その長さは239kmもあり、日本で6番目に長い川で東北地方では北上川に次ぐ長さです。

この川は普段は流れが緩い穏やかな川で、中下流部では江戸時代から米などを運ぶ船運がありました。しかし、増水時にはあふれやすく「洪水被害の絶えない暴れ川」でもあると言われており、実際に1986年の台風10号に伴う大雨で中下流の広い地域で大規模な洪水が起こっているほか、2011年には東日本大震災の津波の逆流により大規模な海嘯が発生しています。

このような阿武隈川は今回の台風19号に伴う大雨でも、中下流の広い地域で各処で堤防が決壊し、大規模な洪水が発生しています。

ではまず初めに、上流域の福島県白河での水位変化を見てみましょう。

1.白河水位観測所

阿武隈川の白河水位観測所は、東北新幹線新白河駅の近くにあり、河口から約200㎞、水源から約50㎞、また今回氾濫した須賀川市からは20㎞ぐらい上流になります。

阿武隈川白河水位観測所の水位データ

出典:国土交通省

阿武隈川白河水位観測所の水位変化

出典:国土交通省

上図は白河水位観測所付近の川の断面図で、下表は台風来襲前後(10/11-10/14)の水位データです。なお、この地域では堤防の決壊等の被害はありませんでした。

この川の断面図は10/18午後のデータですが、まだ平常時の水位を1mほど上回っています。
台風19号が来た時には10/12の14:00頃から水位が急上昇を始め、10時間後の深夜24:00にははん濫危険水位3.50mを越え、最高水位の3.60mにまで達しています。ただ、その1時間後にははん濫危険水位を下回り徐々に水位は低下していきます。

この辺りは、1986年の水害後800億円という巨額の予算で建設した堤防のおかげで洪水を真逃れたと言えます。(下の写真はその巨大な堤防の一部:出典:グーグルアース)

巨額の予算で建設した阿武隈川の堤防

出典:グーグルアース

次は阿武隈川で今回最初に堤防が決壊し、町が水没してしまった宮城県の丸森町です。

2.丸森水位観測所

この丸森水位観測所は、河口から約40㎞の丸森町にあります。

阿武隈川の丸森水位観測所の水位データ

出典:国土交通省

阿武隈川の丸森水位観測所の水位変化

出典:国土交通省

上図は丸森水位観測所付近の川の断面図で、下表は台風来襲前後(10/11-10/14)の水位データです。なお、この地域では支流が合流する地点で堤防が決壊し、甚大な被害を被りました。

この川の断面図は10/18午後のデータですが、まだ平常時の水位を1mほど上回っています。
台風19号が来た時には、10/12の16:00頃から水位が急上昇を始め、10時間後の翌日深夜2:00にははん濫危険水位22.30mを越え、6:00には最高水位の23.99mにまで達しています。その後も17:00まではん濫危険水位を上回っています。つまり、この辺りの阿武隈川は実に15時間もの間、はん濫危険水位を上回っていたのです。

専門家の話よれば、阿武隈川の上記のような長時間にわたる異常増水で、丸森周辺の山に降った雨が集まる支流の川の水が、長時間阿武隈川に流れ込めず氾濫を起こし、丸森町を水浸しにしたそうです。下図は、毎日新聞の記事から引用した「丸森町の決壊場所の地図」です。

丸森町の決壊場所の地図

出典:毎日新聞

参考までに、下の表は台風19号来襲時の「丸森町周辺の降水量変化」を表わしたものです。
これを見る限り、1時間当たりの降水量はそれほどでもなく、最高は10/12の23:00の24㎜です。この程度の雨なら都心でもよく見られる量ですね。ただ、10/12の降水量は200㎜を越えており、つまりかなり強い雨が長時間降り続いたということです。

丸森町周辺の降水量変化

出典:国土交通省

下の写真はグーグルアースで見た「丸森町」とその周辺の衛星写真です。
こりゃ、確かに周辺の山々に降った雨はいかにも「丸森町」へと流れ込む地形ですねぇ。

丸森町とその周辺の衛星写真

出典:グーグルアース

なお、総務省消防庁は、17日午前5時の時点で、台風19号の影響で死者65人と行方不明者14人、重軽傷の負傷者349人が確認され、全半壊の住宅は94棟、浸水家屋は3万3600棟以上にのぼると発表しています。また、国土交通省は、同日午前5時現在で、河川の堤防決壊は7県の59河川90カ所と発表しています。

追記(2019年11月7日):NHKによると、台風19号の最終的な被害は、全国で90人死亡5人行方不明、堤防決壊71河川140か所、土砂災害805件、住宅被害8万7000棟余ととてつもないものでした。

今回の例を見る限り、国が管理している大きな一級河川でも「増水を始めて10時間程度」ではん濫危険水位を上回ってしまうようですね。つまり、夕方まで普段と変わりない状態でも、深夜にはいつ洪水になるかわからないほど増水しているわけですね。

やはり、「早めの避難が第一」ですねぇ。
特に自分のような身体が不自由な人間やお年寄り、そして小さなお子さんを持つご家族の方は!

ただ今回、「日本の避難所はレベルはひどい」との指摘もよく耳にしたので、今度時間があるときに他国の行政の防災対応について調べてみたいと思います。

堤防決壊現場

 

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