21世紀は「中国の時代?」それとも「インドの時代?」

社会・経済

最近、様々な場面で「インド」という国名を目にすることが増えました。自分は様々な国で仕事をしてきたのですが、インドには一度も行ったことがなくほとんど知識がありません。そこで今回は、米国と並び今や世界の政治・経済・安全保障のメインプレーヤーとなった中国とインドを様々な面から比較してみました。

なぜ、今インドが世界中から注目されているのか?

インドが注目されている理由は複数ありますが、主な理由は以下の通りです。

巨大な人口とその構造

国連が発表している「世界人口2023年」によると、インドの人口は推定で14億2860万人、一方の中国は14億2570万人。なんと1949年の建国以来ずっとトップだった中国を遂にインドが抜いてしまったのです。誰もが長らく常識と思ってきた「世界で一番人口の多い国=中国」が変わってしまったのです。さらに今後は中国は人口減少社会へと変化してしまうのでその差は広がっていくそうです。

人口推移インドvs中国

出典:日経BP

さらにインドが注目されている理由は、下図のように両国の人口ピラミッドの形に非常に大きな違いがあるからです。中国はつい最近まで「一人っ子政策」という人口抑制政策を取ってきたため尻すぼまりとなっており、間もなく日本と同じように「高齢化問題」に悩まされると言われています。一方のインドは、まさにピラミッド型の典型的な途上国パターンで今後40~50年は人口ボーナスを享受できると言われています。

注)人口ボーナスとは?
人口ボーナスは、一国または地域において、労働力人口(=15歳~64歳)が増加し、若い労働者の割合が増えることで経済が活性化し経済的な成長や発展の潜在能力が高まる現象のこと。ただし、この人口ボーナスは一時的な現象であり、やがて若年労働力人口が減少し日本のように高齢化社会に移行してしまうのです。

ITやデジタル分野での豊富な人材

インドは発展途上国の中では珍しく早くからデジタル化やIT化が進んでいました。その理由は、豊富なかつ優秀な理数系人材の存在(インドでは小学生でも二桁の九九ができることは有名ですね)と高い英語力を持つ人材の存在(長年イギリスの統治下にあったインドでは早くから英語が公用語の一つだった)です。実際にソフトウェア開発、情報技術などの分野では世界でもトップクラスの実績を収めている企業もたくさんあります。ちなみにグーグルやマイクロソフト、IBM、アドビ、ノキア、ペプシコ、スターバックス、シャネル・・・これら企業の現在のトップ(CEO最高経営責任者)はみんなインド人なのです。

16歳なのに飛び級で世界最高水準にあるインド工科大学を受験する地方に住む高校生。インドの15歳から24歳の人口は2.5億人以上で受験競争は超熾烈とのこと。 出典:NHK

非常に多様性に富んだ民主主義国家であること

よく中国は「漢民族の国家」とか「共産党一党独裁の社会主義国家」と言われますが、一方のインドは「多様性の民主主義国家」と言われます。下の表は両国の基本的な国家要素を比較したものですが、確かにインドの方は多様性豊かな国である面「混沌」としています。21世紀は「ダイバーシティ(多様性)」の時代と言われていることを考えると、確かに21世紀は「強権で押さえつける中国の時代」というよりも「カオス的多様性をベースとしたインドの時代」のような気もします。

中国インド
民族漢族→約92%アーリア族→約72%、ドラヴィダ族→約25%
言語中国語(北京語、マンダリン)ヒンディー語を筆頭に、ベンガル語、テルグ語、英語など多数
宗教仏教、道教、イスラム教、キリスト教などヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教、ジャイナ教、仏教など
国家体制社会主義(共産党一党独裁)民主主義

世界経済でインドが影響力を持ち出すのはいつ頃から

国家としてのインドは、世界での影響力はまだまだ大きいとは言えませんが、前述の通り人材という面ではIT分野を中心にもはやインド人は無視することはできなくなっています。

下のグラフは昨年2022年のIMF統計名目GDPトップ10です。ご覧の通り、既にインドは英国、フランス、ロシアを抜き5位になっているのです。同じ統計の2012年当時は現在の半分ぐらいの数字で11位だったのに、たった10年で倍増させたのです。「奇跡の経済発展」と言われている30年前の中国と同じですね。日本がグダグダしてる間にあっという間に世界の大国になってしまうのでしょうね。

出典:グローバルノート

下のグラフは世界的金融大手の米ゴールドマン・サックスが昨年末に発表した「BRICs経済の長期成長見通しに関するレポート」からのもので「2021年以降の実質GDP水準予想(兆米ドル)」です。これを見ると中国だけでなくインドの成長速度がいかに異常であるかがわかると思います。悲しいかな・・・日本は2010年頃に中国に追い抜かれ、2025年頃にはインドにも追い抜かれてしまうのです。ちなみに比較的楽観的な日本のシンクタンク日本経済研究センターでも、2019年に「2029年には名目GDPは日本を追い越し米中に次ぐ世界3位の大国になる」と予測しています。こう見てきますと・・・、21世紀前半は米中の時代21世紀中盤からは米中イの時代と考えるのが自然と思えるのですが・・、皆さんはどう思いますか?

 

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