自分が子供だったころは、「産業革命」と言えばイギリスで起こった蒸気の力を使った織物機械や機関車誕生とその急速な広がりによる社会の大変革(=近代社会のはじまり)と習っていたのですが、最近では「産業革命には第1~4次まであり今は第4次産業革命の入り口にある」と言われています。自分のような昭和おじんにはさっぱりわからないので、今回はいい機会だと思い改めて「産業革命」なるものについていろいろと調べてみました。
最初の「産業革命」は「動力革命」だった!
私たち人類は古代からより良い生活を求めて、様々な「道具」を発明してきました。モノを運ぶためには「リヤカー」、畑を耕すためには「切馬鍬」、布地を織る「織物機」などなどたくさんのものがあります。しかし、これらの道具を動かす動力源は「産業革命」以前は全て人力か馬や牛などの動物の力でした。ところが一人の天才が「蒸気の力を利用した機(はた)織り機」を発明したのです。確かに水が沸騰して水蒸気になる時にはその体積は1700倍になり、物凄い力を生み出します。このように「蒸気が生み出す力」を「様々な道具を動かす力」に利用していったのが「第1次産業革命」です。中でも社会を最も大きく変えた発明があの「蒸気機関車」です。
では、この「第1次産業革命」はどこでいつ起こったのでしょうか?・・・答えは「イギリス中西部の織物で有名な町マンチェスター」で「1780年代」です。この頃の世界はというと・・・、イギリスのお隣フランスでは「フランス革命(1789年)」、大西洋の対岸アメリカでは「独立宣言(1776年)」、日本はというと「江戸時代中期(老中松平定信の時代)」です。まあ、この第1次産業革命が250年以上続いた大英帝国の時代の起点と言っても過言ではありません。ちなみに1804年には早くも世界初の蒸気機関車がイギリスで完成したそうです。日本初の蒸気機関車の運行は1872年で70年近く遅れていたんですね。
第2次産業革命は「石炭から石油、そして電気」への転換!
第1次産業革命と第2次産業革命とのはっきりとした境はないようですが、概ね以下のような違いがあると言われています。
第1次産業革命 | 第2次産業革命 | |
燃料源 | 石炭 | 石油・電気 |
発祥地 | イギリス | ドイツ・アメリカ |
産業部門 | 軽工業 | 重化学工業 |
主な発明 | エアジェット織機、蒸気機関車 | ガソリン&ディーゼルエンジン、電球 |
時期 | 18世紀後半~ | 19世紀後半~ |
第2次産業革命の結果、欧米では資本蓄積と巨大投資が急速に進展し、重化学分野ではいくつもの巨大企業そしてコンツェルン(=財閥)が誕生することとなったのです。以降、世界は急速に資本主義→帝国主義→ブロック化→世界大戦という道を歩むことになるのです。
コンピューターの登場がもたらした第3次産業革命
世界中の人を巻き込んだ第二次世界大戦後、コンピューターの登場(1946年)と共にスタートした第3次産業革命は「デジタル革命」とも呼ばれますが、まあ初期のころは簡単に言うと「人間が行っていた単純作業を機械に自動でやらせる」というものでした。しかし、その対象範囲はどんどん広がり、紙データのデジタル化による各種事務作業の自動化・効率化や産業用ロボットによる生産の自動化・効率化、さらにはコミュニケーション領域における音・映像のデジタル化利用やインターネット利用にまで非常に多岐にわたります。
参考までに、ここまでの産業革命を2016年のダボス会議では、以下のように総括しています。
まさにこの第3次産業革命により、飛躍的に工業製品の大量生産及び大量流通が可能になり、結果として現代日本のような「モノあまり&使い捨て消費社会」を生み出したのです。また、見方を変えれば戦後の日本の発展は前述の第2次産業革命の恩恵と続く第3次産業革命初期~中期の波にいち早く乗れたことで実現されたのです。ところが、日本はこの第3次産業革命の後期の社会のインターネット化という流れに乗り遅れてしまったのです。その主たる原因は・・・、日本人の英語コンプレックスと社会全体の高齢化、そして最悪のなのは日本政府の過去の栄光へのしがみつきです。
では、第4次産業革命とはいったい何?
第4次産業革命は言わば第3次産業革命の延長線上にあるとも言え、一般的にはIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を用いることで起こる製造業とサービス業の革新と言われています。補足で説明すると、「IoT」は「あらゆるモノがインターネットと繋がり、情報交換をすることで相互に制御するシステム」で最近の外出先からスマホを通じてエアコンや照明機器などを操作するシステムがこれに相当します。「AI」はここ1年で急速に拡大したもので、これは人間が過去の経験や論理的思考に基づいて行ってきた知的作業をコンピュータにやらせるというものです。代表的な例は「Chat GPT」などの生成AIアプリです。ちなみにこの「Chat GPT」は発表からたったの1ヶ月足らずで全世界で1億人以上のユーザーを獲得したそうです。
このように第4次産業革命はそれまでの産業革命とは桁違いに進展スピードが早いと予想されており、2050年頃までには世の中は一変してしまうと言われています。
日本再生の最後のチャンス
このように非常に短期間で世の中を変えてしまう第4次産業革命ですが、残念ながら欧米先進国や中国に比べ日本はすでに大幅に乗り遅れています。その原因の多くは、日本の保身的で硬直化した行政システムと同じように保身的で営利主義の政治家にあると自分は考えます。
実際日本では7年以上も前の2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)、「ニッポン一億総活躍プラン」などにおいて、「第4次産業革命」を成長戦略の中核に位置付け「第4次産業革命に関連する分野を伸ばすことで、①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会、いわば「Society 5.0」(超スマート社会)を世界に先駆けて実現し約30兆~40兆円の付加価値を作り出す」と威勢だけはいいが、未だにろくに目新しい政策は発表されておらず予算も大して割り当てられていません。
自分が思うに、日本は第4次産業革命の一つのキーファクターである「AI」という分野では、日本語という特殊な言語形態上やや世界的に不利と考えられるが、もう一つのキーファククター「IoT」という分野では様々な優れた工業製品の開発製造で世界トップレベルにある日本はかなり部があると考えています。だから政府にはバブル以降の日本の悪い癖である「全方位戦略」ではなく、初心に戻って「一極集中戦略」を選択して欲しいものです。そうしなければ21世紀中盤以降の日本社会は本当に悲惨な状況になってしまうような気もしますが・・・。
皆さんはどう思いますか?