人工衛星を現在自力で打ち上げることができる国はどこ?

大人の基礎知識

最近、「北朝鮮の軍事衛星打ち上げ失敗」や「国産ロケットH3打ち上げ失敗」や「福岡のベンチャー企業人工衛星打ち上げ成功」など、人工衛星に関する話題がたびたびマスコミで取り上げられていますが、

“あなたは自力で人工衛星を打ち上げることができる国がいくつぐらいあるかご存知でしょうか?”

自分は現役時代経済が専門だったので、今話題の宇宙関連の知識はほとんどなく、完全に時代に乗り遅れているような気がしていました。そこで今回はこの「人工衛星」ついていろいろと調べてみました。

人工衛星とは?

まず始めに原点に戻り「人工衛星とは何か?」を調べてみました。そもそも、「衛星」は“定常的に惑星の周りを周回している天体”のことだそうです。ここで「惑星」と「天体」という言葉もやや曖昧な感じがしたので調べました。まず「天体」とは“宇宙空間に存在しているあらゆる物体”のことだそうで、さらに「惑星」は“太陽のように自らが光る恒星の周りを回っている天体(星)”のことかを指すそうです。

つまり、普段私たちが「人工衛星」と言っているものは、“地球の引力に引き付けられて地球の軌道上を周回している人間が作った(=人工)機器=人工天体”のことなのです。だから、広義でいう「人工衛星」 には気象衛星や軍事衛星などをはじめ人が住むような宇宙ステーションも含まれているのです。

世界初の人工衛星はソ連?

ちょっと意外な気もしますが、世界初の人工衛星はアメリカではソ連なのです。今から66年前の1957年10月4日に、ソ連はスプートニク1号を打ち上げ無事地球の軌道にのせることに成功したのです。

これを知ったアメリカは急遽計画を前倒して、ソ連の2ヶ月後の1958年1月31日にエクスプローラー1号を打ち上げ成功させたのです。ちなみに、日本初の人工衛星は米ソより10年以上も遅れた高度経済成長期真っ只中の1970年2月11日に東京大学宇宙科学研究所が上げた“おおすみ”です。そこから50年以上もたった現在ですが、悲しいな宇宙分野での日本と両国の技術力差は縮まるどころか拡がる一方と言われています。

人工衛星の種類は?

このような人工衛星ですが、現在ではその目的や役割により様々な種類のものがあります。以下は、現時点でメジャーな人工衛星の種類とその特徴です。

通信衛星
インターネット、電話、テレビ、ラジオなどの通信サービスを提供することを目的としている人工衛星です。

気象衛星
地球の気候と天気のパターンを観測し、これらの情報を収集して天気予報に利用することを目的としている人工衛星です。

偵察衛星
地形やインフラの詳細な情報を収集することを目的としている人工衛星で、主に軍事目的で使用され敵地の活動を監視したりします。

科学調査衛星
宇宙科学、地球科学、天文学、生物学などの学術研究目的で使用することを目的としている人工衛星で、地球の磁場や大気、海洋、陸地の観測、さらには宇宙線の観測などを行います。

地球観測衛星
地球の表面を詳細に観察し、気候変動、環境問題、自然災害の監視することを目的としている人工衛星です。

ナビゲーション衛星
GPS(アメリカ)、GLONASS(ロシア)、Galileo(欧州連合)、BeiDou(中国)などの衛星ナビゲーションシステムを構成する人工衛星です。これらの衛星からの信号を用いて、地上のレシーバーは正確な位置情報を得ることができます。日本ではよく「GPS位置情報」という言葉を目にしますが、それはアメリカのナビゲーション衛星からの信号を利用させてもらっているからなのです。

上記の他にも、宇宙探査衛星、惑星間衛星、アマチュア無線衛星などさまざまな種類の人工衛星が存在しますが、今後は科学の発展とともに益々いろいろなタイプの人工衛星が誕生するのは確実と言われています。

静止衛星と周回衛星はどう違うのですか?

マスコミでは”静止衛星”いう言葉もよく目にしますが、これは何なのでしょうか?
実は、人工衛星は前述の分類以外に“静止衛星”と“周回衛星”という分類もあるのです。両者の特徴と違いは以下の通りです。

静止衛星
静止衛星は地球の赤道上にある特定の高度(約35,786km)を周回しています。この高度は静止軌道とも呼ばれ、衛星の周回周期がちょうど地球の自転周期(約24時間)と一致するため、地球上の特定の地点から見ると衛星は一定の位置に「静止」して見えます。つまり、地球の自転と同じ速度で衛星が周回しているので、地上から見たときに衛星が動いていないように見えるのです。通信衛星や気象衛星などにこの種類の衛星がよく使われています。

周回衛星
一方、「周回衛星」は地球周りを回る全ての衛星を指します。つまり静止衛星も周回衛星の一部なのですが、通常この用語(=周回衛星)は地球の自転と同期していない衛星(=静止衛星以外)を指します。これらの衛星は地球の任意の高度で軌道傾斜角で運行し、地上から見ると動いて見えます。これには、低軌道を周回する観測衛星、中地球軌道を周回するGPS衛星、高軌道を周回する探査衛星など、様々な目的で使われる衛星が含まれます。

いったいどのくらいの数の人工衛星が地球を回っているの?

経産省や宇宙航空研究開発機構JAXAも利用している世界的な宇宙関連機関Space-Track.orgによると、2022年12月時点で、地球を周回する活動中の人工衛星は約7,000基もあるそうで、しかも近年は毎年1,000基以上も増えているそうです。ただし、これらの人工衛星は活動中のものだけで、すでに機能を停止した「スペースデブリ」(宇宙ごみ)として存在するものも含めるとその数は大幅に増え、約30,000基以上もあるそうです。

また、下のグラフは最近の世界全体の人工衛星の打ち上げ数の推移です。まさに2020年は“宇宙時代の幕明け”と言っても過言ではないですね。

世界全体の人工衛星の打ち上げ数の推移

出典:経産省HP

人工衛星を打ち上げることができる国は?

これまでに自力で人工衛星を打ち上げに成功している国は10か国でまた最初に成功した時期は以下の通りです。

1.ロシア(旧ソビエト):1957年10月
2.アメリカ:1958年1月
3.フランス:1965年11月
4.日本:1970年2月
5.中国:1970年4月
6.イギリス:1971年10月
7.インド:1980年7月
8.イスラエル:1988年9月
9.イラン:2008年8月
10.韓国:2022年6月

さらに、下のグラフはこれまでに各国が打ち上げた人工衛星の数です。なお、打ち上げ作業自体は他国や欧州宇宙機関(ESA)に依頼しているケースも含まれているのでご注意ください。

各国が打ち上げた人工衛星の数

出典:経産省HP

ICBMと同様に、まだまだアメリカとロシアの独壇場ですね。自分はマスコミの過剰な“日本びいき”の報道ばかり見ていたので「宇宙ビジネスが日本の明日の飯の種」と思っていましたが、これじゃとても無理ですね。

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