まだ皆さんも記憶に新しいと思いますが、先日ようやく「東京ファーストの会」(現東京都知事の小池百合子さんが2017年に旗揚げした政治団体)に所属していた元都議の木下富美子氏(55)に懲役10カ月、執行猶予3年の有罪判決が東京地裁から下されました。
彼女が起訴された罪は、道路交通法違反(度重なる無免許運転)ですが、その具体的な内容は・・・議員当選後の2017年からの逮捕される4年間に12回の交通違反と4回の免許停止というちょっと常識では信じられないものです。しかも選挙運動中の自分の選挙カーまでも無免許で運転していたのです。「呆れて物も言えない」と感じた人が多いのではないでしょうか。
さて、今回は上記の判決にもある『執行猶予』ですが、恥ずかしながら自分はぼんやりとしか理解していなかったので、いい機会と思い詳しく調べてみました。
サルでもわかる「執行猶予」の意味
制度そのものを取り仕切る検察庁によると、
以前に懲役刑や禁錮刑に処せられたことがないなど一定の条件を満たす場合に,判決で3年以下の懲役刑又は禁錮刑を言い渡すとき,情状により,刑の全部の執行(刑務所に入ること)を1年から5年の範囲で猶予することができます。
また,同様に3年以下の懲役刑又は禁錮刑を言い渡すとき,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要かつ相当である場合に,その刑の一部の執行を1年から5年の範囲で猶予することができます。
また、ウィキペディア(Wikipedia)によると、
執行猶予(しっこうゆうよ)とは、判決で刑を言い渡すにあたり、被告の犯情を考慮して、一定の期間(執行猶予期間)法令の定めるところにより刑事事件を起こさず無事に経過したときは刑罰権を消滅させる制度。
相変わらず法律関係の文章はわかりづらいですね。細かいことはさて置き核心部分を分かりやすく言うと・・・
「過去にさしたる犯罪歴がなくかつ判決が3年以下の懲役刑又は禁錮刑ならば、執行猶予期間の間に娑婆(しゃば)で清く正しく生活(=犯罪を起こさない)すれば刑務所に入らなくもいい」ということです。
ただ、執行猶予期間中に再び何らかの犯罪を犯した場合は、即刑務所送りになるそうです。
つまり前述の木下富美子の場合『懲役10カ月、執行猶予3年』なので、刑務所に入らず今のままで大人しく3年間暮らしていればいいということです。
この執行猶予制度はイギリスやアメリカなどの欧米諸国では宣告猶予制度として200年近い歴史があり、日本では100年ほど前の1905年(明治38年)から用いられたそうです。
執行猶予中の生活に制約はあるの?
普通に生活している限りには、特に制限はないようです。結婚、離婚、引っ越し、就職、旅行なども自由なようです。ただ海外旅行の場合、前科があるために渡航先の国に入国を拒否されてしまう可能性があるため、あらかじめ旅行代理店に相談したり、渡航先の大使館、領事館などに問い合わせたりして、入国の可否を確認しておいた方がいいそうです。
なお、再び犯罪を犯し起訴されて懲役刑になると、執行猶予が取り消されて服役しなければならなくなるとともに、新たな事件の懲役刑も服役しなければならないので、長期間服役することになってしまうケースも多いそうなので注意が必要です。とにかく執行猶予中は清く正しく生活を続け、間違っても法律に触れるようなことはやらないことです。なお、駐車違反など軽微な交通違反では、交通反則金や罰金を支払えば執行猶予が取り消されることはないそうです。
「執行猶予」付きの判決は一般的なの?
では、今回の木下富美子氏のように「執行猶予」付きの判決は一般的なのでしょうか?それとも政治家や富裕層などのいわゆる「特権階級」に偏った特別なものなのでしょうか?
法務省の関係機関である法務総合研究所によると、平成8年から17年までの10年間で懲役又は禁銅刑の判決を受けた人で初犯者(初めて罪を犯した人≒前科のない人)約22万人の中で「執行猶予」付きの判決を受けた人の比率です。
行猶予率執 | 執行猶予取消率 | |
全体 | 84.7 | 11.0 |
覚せい剤取締法 | 94.2 | 18.0 |
窃盗 | 89.4 | 14.5 |
強制わいせつ | 85.4 | 4.6 |
傷害・暴行 | 83.6 | 7.3 |
詐欺 | 78.0 | 8.9 |
強姦 | 55.0 | 3.6 |
放火 | 41.7 | 3.5 |
強盗 | 34.1 | 9.0 |
殺人 | 40.2 | 1.8 |
この表を見る限り、約9割近い人に執行猶予が付いており今回の木下富美子氏が特別であったとは言えないようですね。また、執行猶予取消率は全体で約1割程度であることについては評価が難しいですね。
まあ、いずれにしても「無免許で選挙カーを運転する」ような非常識な人間の応援演説をしてしまった現都知事である小池都知事と同事務所も適当だなぁと思いませんか?















