安倍政権は最重要課題のひとつとして「すべての女性が活躍する社会」の実現をあげており、2020年までに社会の中で指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げています。まあ、2020年も残り5ヶ月、とても実現できるとは思えないですね。
もともとこの政策を掲げた背景には、先進国の中でも非常に遅れている女性の社会進出の現状があり、実際、2016年のOECD(経済協力開発機構)調査では日本の女性就業率は34か国中23位にとどまっています。
そこで今回は、世界各国の国会議員(下院)における女性議員比率を見てみました。
世界の平均は22.8%、日本は9.5%
今から130年も前にスイスのジュネーブに設立されたIPU(列国議会同盟)という各国の議員による国際的な機構によると、世界191ヵ国の国会議員(下院)における女性議員の比率の平均は22.8%だそうです。まあ、4~5人に1人といった感じですね。
一方、日本はわずか9.5%で、G7中最下位、世界191カ国中156位です。世界中から女性の社会進出が遅れていると言われているサウジアラビアは、意外に高く19.9%で日本の倍以上です。10%にも満たない国は38カ国しかありませんが、日本はそのうちの一つということです。
【主要国の国会議員の女性議員比率】
アイスランド | 47.6% |
スウェーデン | 43.6% |
フィンランド | 42.0% |
ノルウェー | 39.6% |
アルゼンチン | 39.5% |
ドイツ | 37.2% |
オランダ | 36.9% |
ニュージーランド | 34.2% |
オーストラリア | 32.7% |
イタリア | 30.1% |
カナダ | 30.1% |
イギリス | 27.7% |
イスラエル | 27.5% |
ベトナム | 26.7% |
フランス | 26.4% |
シンガポール | 23.8% |
中国 | 23.7% |
サウジアラビア | 19.9% |
インドネシア | 19.8% |
米国 | 19.4% |
韓国 | 17.0% |
ロシア | 16.1% |
日本 | 9.5% |
タイ | 6.1% |
イラン | 5.9% |
出典:IPU(Inter-Parliamentary Union)
先進国のみならず世界的に見ても、日本は女性の政治参画は著しく遅れている国なのです。
皆さん、驚きませんか?
一方、女性議員比率が高い国は、ヨーロッパ各国とくに北欧(アイスランド47.6%、スウェーデン43.6%、フィンランド42.0%)です。また、女性の社会進出が進んでいるイメージの強い米国は意外にも低く19.4%でした。
日本の女性議員比率が低いのはなぜ?
多くの発展途上国より低い日本の女性議員比率ですが、その理由の1つが、日本では一般的に「家庭的責任」が女性にばかり重くのしかかっており、政治に割ける時間が少なくなるためだと言われています。確かに男性議員の場合は、家庭的責任を免責されるばかりか、家族がいろいろな面で政治活動を支援してくれることも多いようです。
つまり、子育てや家事などの負担が、女性に政治家になることを思いとどまらせる要因となっているため、結果的に女性議員比率が低いのです。
もう一つの理由は、男女の役割に関する通念(ステレオ・タイプ)が影響していると言われています。具体的には、日本にはなんとなく「政治は男性のもの」という通念があり、女性候補者はとりわけ男性有権者からの支持を集めにくいそうです。
また、男性議員と同じような主張をすると、今度は「女性だからこそ」応援している支持者の期待を裏切ることになってしまうのです。
つまり、性別役割分業の実態と意識が女性の政治参画の足かせとなっている。
そのため、専門家の間からは、女性議員が増やすために、選挙の立候補者の一定割合を女性にすることを義務化する「クオータ制」の導入を求める声も上がっているそうです。
地方議会はどういう状況?
次に、47都道府県議会での女性議員比率を見てみました。データの出典は、内閣府です。
全国平均は、10.1%で前述の国会議員(衆議院)とほぼ同じレベルです。しかし、こちらは都道府県により非常に大きな開きがあります。
まず、女性議員比率が最も高いのは、東京都で28.3%です。2位は大きく離れて京都府の18.3%、3位は滋賀県で15.9%です。地方議員に関する海外の明確なデータは、ありませんが、日本の数字をはるかに上回っていると思います。
逆に最も女性議員比率が低いのは、香川県で2.4%、次いで佐賀県と山梨県の2.6%です。この3県は県議の中でたった一人だけが女性議員という異常な状態です。
<女性議員比率ベスト10>
順位 | 都道府県名 | 女性議員比率 |
1 | 東京都 | 28.3% |
2 | 京都府 | 18.3% |
3 | 滋賀県 | 15.9% |
4 | 岩手県 | 14.6% |
5 | 神奈川県 | 14.3% |
6 | 北海道 | 12.9% |
7 | 山口県 | 12.8% |
8 | 兵庫県 | 12.6% |
9 | 福島県 | 12.1% |
10 | 栃木県 | 12.0% |
<女性議員比率ワースト10>
順位 | 都道府県名 | 女性議員比率 |
1 | 香川県 | 2.4% |
2 | 佐賀県 | 2.6% |
3 | 山梨県 | 2.6% |
4 | 群馬県 | 4.0% |
5 | 愛媛県 | 4.3% |
6 | 静岡県 | 4.3% |
7 | 大阪府 | 4.5% |
8 | 山形県 | 4.5% |
9 | 大分県 | 4.7% |
10 | 石川県 | 4.7% |

たった一人とは、こりゃー、ひど過ぎる。
実は日本で女性に参政権が与えられて初の選挙となった1946年の衆議院での女性議員比率は8.6%でした。前述のとおり、現在の女性議員比率は9.5%なので、70年以上経ってもほどんと変わっていないのです。
今の時代、少子高齢化が急速に進展し、子育て・教育・医療・介護・福祉分野での重要な課題が山積しています。生活に密着するこれらの課題の現場は地域社会や家庭であり、そしてその主たる担い手は女性です。
だからこそこれからの時代は、子育てや介護の実体験を持つ女性こそが、一刻も早く政策決定の場に踏み出し、これらの課題解決のために豊富な経験を活かしてもらいたいものです。









