日本の警察の現状と警察官の階級構造

政治・行政

ここ数年、信じられないような「警察官の不祥事」が起きています。この1ヵ月だけでも・・・、

・「女性警官が駅のトイレに実弾入り拳銃忘れる」
・「警察官(巡査長)が容疑者本人に逮捕予定日を漏洩し、数百万円の授受」
・「元警部が教官を務めていた警察学校の女子寮に50回不法侵入、懲役1年2月、執行猶予3年判決」
・「トラブルの通報を受け出動した巡査長 被害者の車から6万円を盗む」
・「巡査部長が病死遺体検視中に300万円の腕時計盗む 」

といった具合です。そういえば、昨年は「19歳警察官が教育係だった巡査部長を“罵倒されたから”と拳銃で殺害」という耳を疑ってしまうような事件がありましたね。

そこで今回は、「日本の警察の現状」についていろいろ調べてみました。

日本の警察官は市民500人に1人の割合

現在、日本には約27万人の警察官がいて、その大半が各都道府県に所属する地方公務員です。この数は他国に比べてると、多いのでしょうか?少ないのでしょうか?

下のグラフは、やや古いデータなのですが「人口10万人あたりの警察官の数とその女性比率」です。

人口10万人あたりの警察官の数とその女性比率のグラフ

出典:データえっせい

これを見ると、日本は10万人にあたり200人強、つまり市民500人に1人の警察官がいることになります。これは米国やイギリスとほぼ同じで、10万人にあたり300人前後のドイツやフランスに比べるとかなり少ないと言えます。

ただ、女性警察官の比率は6%強しかなく、世界的に見ても極めて低くなっています。ちなみに、スウェーデンは29%、イギリスは27%、フランス・ドイツは18%、米国は12%となっています。

世界中の女性警察官

出典:dailynewsagency.com

このような世界的に見ても異常な男性偏重の構造を修正するために、警察では女性警察官の採用に積極的に取り組んでいます。ただ、そのスピードは極めて遅く、公表している女性警察官比率目標は「遅くとも2023年4月までに約10%」です。これでは、欧州レベルに達するには何十年もかかりそうですね。

ちなみに、国会議員(下院)における女性議員比率も日本は世界最低レベルで、世界平均22.8%に対して日本は9.5%。これは、なんとG7最下位、世界191カ国中156位です。

→→→ 各国の国会における女性議員比率

 

どうなっている警察官の肩書?

よく警察官の不祥事の報道を見ていると、「巡査部長」とか「警部補」とかいう肩書が出ていますが、詳しくはどうなっているのでしょうか?

この肩書の前に、そもそも警察官になるにはどうしたらいいのか、その方法について見ていきます。ご存じの方も多いと思いますが、警察官になる方法は2つあります。

まず1つ目の方法は、各都道府県の警察本部が年に1-2回の実施するの採用試験に合格し、全寮制である警察学校(この時から給与あり)を卒業し警察官になる方法です。ちなみに、この警察学校は学歴により通わなければいけない期間が違い、高卒は10カ月間、大卒は6カ月間となっています。この警察学校を卒業した者だけが、後日各警察署に配置されるのです。
このルートで警察官になった人が、世間で「ノンキャリア」組と呼ばれている一般的な警察官です。

そして2つ目の方法は、「国家公務員総合職採用試験」に合格し、その後の警察庁が実施する複数回の面接試験にパスして警察官になる方法です。彼らは普通の警察署ではなく中央官庁である警察庁に採用(=国家公務員)され、「キャリア」組と呼ばれているエリート警察官です。

このようにして警察官になった人は全員、警察法に定められた「階級」というものを持っています。この警察官の階級は9つあり、キャリアとノンキャリアに共通したものです。そこで警察官の大半を占めるノンキャリア組の例で見ていきます。

1.巡査
新卒で配属されたノンキャリア警察官の階級は、学歴に関係なく全員「巡査」=いわゆる「ヒラ」です。この巡査の役割は、各警察署の交番などに勤務することです。

2.巡査部長
その後、昇任試験にパスした人は「巡査部長」に階級がアップします。この巡査部長になると、警察署で主任の役職がつき、部下も持ち働きます。この巡査部長には、成績や勤務態度がよければ20代前半でもなれるそうです。

実は、巡査と巡査部長の間には警察法に定められた正式な階級ではありませんが「巡査長」という「階級的地位」があります。この巡査長は、巡査として働きつつ他の巡査に対して指導的役割を担います。一般的に、ベテランの巡査で巡査部長にはなれない人が、この巡査長となるそうです。ちなみに、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の「両さん」こと両津勘吉はこの巡査長で、上司である大原部長は巡査部長です。

こち亀メンバーの銅像

出典:mangaseek.net

3.警部補
さらに昇任試験にパスすると、今度は全警察官の約30%を占めている「警部補」になります。この警部補になると、警察署では係長の役職がつき、現場の責任者として部下を指導していきます。ちなみに、全警察官の約90パーセントが警部補以下の階級だそうです。
また、なんと「キャリア」組は、全員がこの「警部補」からのスタートとなっています。

4.警部
さらにノンキャリアの場合には、警部補として4年以上実務経験後、昇任試験にパスすると、今度は警察官全体の6%ほどしかいない「警部」になります。この警部になると、警察署では課長、警察本部では課長補佐、警視庁では係長などの役職が与えられ、もはや現場に直接関わることは少なく、現場指揮を統括する役割を担うそうです。
そして、この警部という階級までは誰でも昇任試験で上がることができますが、ここから上は実務経験などをもとに選考されるそうです。

5.警視
そしてその上の階級は「警視」で、警察署の署長としての職務に従事します。実はこの警視が「ノンキャリアの出世の頂点」と言われ、哀しいことにノンキャリアではそれ以上の役職につくことはほぼできないそうです。ちなみに、ノンキャリアの場合はもっとも早く警視になれたとしても45歳前後だそうですが、キャリアの場合は採用後7年で全員が警視になるそうです。

この上にも「警視正」「警視長」「警視監」「警視総監」と4階級もありますが、キャリアの警察官のみがなることのできる特殊な階級です。ちなみに、キャリアの場合は採用後15年で全員が警視正になるので、キャリア組にとってはここから上が出世競争になるわけです。

警察庁の紋章

出典:kanto.npa.go.jp

このように独特ともいえる完全なるピラミッド社会の警察ですが、さすが高給で有名な日本の公務員である警察官の給与も驚くものがあります。このご時世でも、警視庁(東京都)の警察官は、高卒の初任給が21万円程度、大卒の初任給が25万円程度となっています。また、経済誌「PRESIDENT」によれば、平均年収はサラリーマンの439万円に対し、警察官は倍近い840万円だそうです。
皆さん、どう思います・・・。

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