世界に遅れること1年以上、日本でもようやく「コロナ騒動」が落ち着いてきて街には賑わいが戻ってきましたが、その途端に「人手不足」と政府やマスコミは騒ぎ立てている今日この頃。日本が少子高齢化で「労働力不足」で苦しむことはずっと前からわかり切っていたのに政府はろくな対策もしていないのが現状です。
そこで今回はこの「日本の労働力不足」に焦点を当ていろいろと探ってみました。
日本の労働力不足はどのくらい深刻なのか?
人材派遣で有名なテンプスタッフの関連会社パーソル総合研究所が2018に発表した予測によると、「2030年には644万人の人手不足」となるそうです。また、リクルートの関連会社リクルートワークス研究所が最近発表した予測によると、「2040年には約1100万人の人手不足」となるそうです。すごい数だと思いませんか?
では、海外の先進国と比べてみるとどうなのでしょうか?国際比較はそれぞれの国固有の事情もあり難しいのですが、国連やOECDなどの国際機関では「全人口に占める生産人口(15~64歳)の割合」を見るので、ここでは世界銀行のデータをもとに「主要国の生産人口比率2021年」を見てみました。すると、下表の通り現在でも日本はダントツでビリなのです。確かに自分がサラリーマンをやっていた30年ほど前は都心では50-60代のオジさんなどほとんど見かけなっかたような気がしますが、最近では20-30代の若いサラリーマンを見かけることの方が珍しくなってきたような気がします。本格的な少子高齢化社会はまだまだこれからと言われているのに・・・。
それにしてもお隣さんの韓国がこんなに生産人口比率が高いとは驚きました。最近、日本と韓国の経済や技術分野での差が急速に縮まってきていると言われていますが、このままでは近い将来、中国だけではなく韓国にも抜かれてしまう危険を感じますね。
国名 | 生産人口比率 |
韓国 | 71.5 |
ブラジル | 69.9 |
中国 | 69.2 |
ベトナム | 68.7 |
インド | 67.5 |
ロシア | 66.7 |
カナダ | 65.8 |
米国 | 65.1 |
オーストラリア | 65.1 |
ドイツ | 64.0 |
イタリア | 63.7 |
イギリス | 63.4 |
スウェーデン | 62.2 |
フランス | 61.3 |
日本 | 58.4 |
世界全体 | 64.9 |
ちなみに国交省の予測では、2050年には日本の総人口は現在より3割近く減少し1億人を割り込むそうです。日本の人口が1億人を超えたのは高度経済成長期真っ盛りの1967年なので50年以上も続いた「1億人時代」が終わるわけです。またその時点での生産人口比率は51.8%にまで低下するそうです。さらに恐ろしいのは、内閣府の予測ではこの生産人口の減少傾向は2065年頃まで続くそうです。国立社会保障・人口問題研究所が最近発表したデータでは2065年の日本の総人口は8808万人で、さらに15~64歳のいわゆる「働き手」である労働人口は、2015年比の4割減となる4529万人という見通しなのです。皆さんはどう思いますか・・・。
労働力不足への対応策は?
では現在レベルの日本社会を維持するためには、このような「労働力不足問」にはどのように対処すればいいのでしょうか?
一般的に言えばその対処方法は、以下の3つです。
①労働力を増やす
②労働生産性を上げる
➂(人間の係る)労働量を減らす
①の具体的な対策とし政府が挙げているのは・・・、
A.高齢者の活用→定年の延長などにより実現すると言っているが・・・、一般的に高齢者はITに弱くとてもこれからの時代での有効潜在人材になると思えませんが。
B.専業主婦の活用→世界的に見ても日本の女性の有職率の低さはよく言われていますが・・・、少子化対策と女性の有職率Upを図るのは今のような場当たり的な対応策では、結局のところ「二兎を追う者は一兎をも得ず」で終わるような気もするが。
C.外国人労働力の受入拡大→「技能実習生制度」というお題目のわけのわからない施策を早くやめないと、円安で外国人労働者の日本離れが急速に拡大しているのが現実です。今の制度のままでは受け入れ枠を拡大しても“閑古鳥が鳴くだけ”になるのは目に見えているのでは?
コロナと円安のダブルパンチで日本を敬遠する外国人労働者
下のグラフは日本の外国人労働者数の推移を表したグラフです。
今から15年前の2008年には日本全国で働く外国人労働者は48.6万人で全就業者の0.7%に過ぎなかったのですが、13年後の2021年には172.7万人で全就業者の2.6%と数で3.6倍、比率で3.7倍に急増しているのです。確かにコロナ前までは自分の住む大田区でもコンビニや外食店、あるいは建設現場などでは日本人労働者よりも外国人労働者の方が多かったような気がします。
しかし、2020年からのコロナパンデミック後は日本の外国人労働者の数は増加どころかむしろ減少傾向にあるのです。さらにそれに拍車をかけたのが近年の円安と物価高です。つまり、長引くコロナ不景気で職を失う外国人労働者が急増、しかも日本政府からの援助はほとんど無し。諦めて帰国せざる負えなくなってしまったのです。とどめは円安と物価高です。コロナが落ち着き出した2022年夏頃から一時帰国していた外国人労働者たちはもはや今の日本で働いてもお金を貯めることはできないということを悟り、日本に戻っていないのです。
日本は働く場所ではなく、観光や買物をする所
2019年に金融大手の「HSBCホールディングス」が「各国の駐在員が働きたい国ランキング」を発表しました。下の表はその結果で、残念ながら日本は下から2番目の32位という結果です。移住したい国として2位になった日本ですが、働きたい国として見ると著しく下がってしまった理由はなんでしょうか。上位に挙がった国を見ると、スイスやシンガポールは賃金が高く、カナダやスペイン、ニュージーランドといった国々は賃金は中程度ながら、ワークライフバランスの良さが高評価につながったようです。一方日本は、調査の個別評価項目で見ると、賃金、ワークライフバランス、教育環境の項目で最下位という残念な結果とのことです。
同様にスイスのビジネススクールであるIMD(国際経営開発研究所)が発行しているWorld Talent Reportの2016年の調査に結果でも、日本の「働く国としての魅力」は、分析対象61カ国の内、なんと52位にとどまっているのです。
もはや外国人にとって出稼ぎ先として日本は全く魅力がない国になってしまったのです。今の日本政府のやり方では外国人労働者は日本に来てくれない時代になってしまったのです。
1位 | スイス |
2位 | シンガポール |
3位 | カナダ |
4位 | スペイン |
5位 | ニュージーランド |
6位 | オーストラリア |
7位 | トルコ |
8位 | ドイツ |
9位 | アラブ首長国連邦 |
10位 | ベトナム |
11位 | バーレーン |
12位 | マン島 |
13位 | ポーランド |
14位 | アイルランド |
15位 | 香港 |
16位 | マレーシア |
17位 | フランス |
18位 | インド |
19位 | ジャージー |
20位 | スウェーデン |
21位 | メキシコ |
22位 | タイ |
23位 | アメリカ |
24位 | フィリピン |
25位 | ガーンジー |
26位 | 中国 |
27位 | イギリス |
28位 | イタリア |
29位 | サウジアラビア |
30位 | 南アフリカ |
31位 | インドネシア |
32位 | 日本 |
33位 | ブラジル |
「労働力不足」対策の最後の望みの綱とも言える外国人労働者も期待薄となると、一体全体日本はどうなってしまうのでしょうか?
ふと感じてしまう政策の矛盾点
ここまで見てくると皆さんは「何かしっくりこない?」と感じませんか?
そうなんです、この政策そのものに内部矛盾があるのです。
労働力不足への対応策である前述の3点、①労働力を増やす②労働生産性を上げる➂(人間の係る)労働量を減らす、と日本政府のとっている政策3点、A.高齢者の活用 B.専業主婦の活用 C.外国人労働力の受入拡大、には以下のような矛盾点が存在しているのです。
・政策のAとBを推し進めれば、どうしても日本全体の労働生産性は低下してしまう。
・政策Cはよほど上手く推し進めなければ、ブルーカラーばかり増え日本全体の労働生産性は低下してしまう。

そうなんです、一般国民がますます貧困してしまう政策を日本政府は推し進めているのです。
本当は早くから ➂(人間の係る)労働量を減らす 政策にお金と人材を集中させなければいけなかったのです。自分は安倍旧政権が完全に日本の未来に蓋をしてしまったと思っています。皆さんはどう思いますか?














