政府の観光立国政策は、日本をダメにする最悪の政策

政治・行政

国はここ20年、「外国人観光客訪日促進」に無茶苦茶積極的です。

この政策の事の始まりは、バブル崩壊から10年以上も経つのに一向に出口の見えない不況のもと、当時の小泉首相欧米諸国に比べ日本の外国人観光客数が少ないことに目をつけ、苦しまぎれに「外国人観光客数を増やし彼らが日本国内に落していくお金で国を潤わしていこう」と考え、2002ワールドカップの日韓共同開催の翌年の2003年に“観光立国宣言”をしたのが始まりです。

この30年間の成果は・・・?

下のグラフは観光庁が発表している「訪日外国人旅行者数の推移」とここ10年の「ドル円相場(月足)推移」です。

見ての通り訪日外国人旅行者数は、小泉政権の観光立国宣言後の2003年の「ビジット・ジャパン政策」開始時の年間521万人から2019年には3188万人と約6倍と大きく伸びています。この間2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響で伸び悩む時期もありましたが、2013年からは円安(2012年当時の1ドル80円付近から110円前後まで3割近い円安)と日本国内のデフレを背景に驚くほど急激に増加しました。

しかし、ご存知の通り2020年のコロナパンデミック後は燦燦たる状態です。ちなみに2020年と2021年の訪日外国人旅行者数はそれぞれ411万人と25万人です。これじゃ、コロナ前の外国人バブル景気でさんざん潤っていた関係業界が一転して青色吐息になるのも当たり前ですね。

訪日外国人旅行者数推移(出典:観光庁)

訪日外国人旅行者数推移(出典:観光庁)

ドル円相場月足推移(出典:SBI証券)

そもそも、本当に観光で立国など出来るのか?

小泉政権以来、特に安倍政権後は異常と思えるほど外国人旅行者数を増やす為に多額の国家予算をつぎ込んでいます。これについては後ほど詳しくご説明いたしますが、まずは「本当に観光で立国など出来るのか?」について見てみたいと思います。

観光庁の推計によれば、過去最高の外国人旅行者数となった2019年の「訪日外国人観光客の日本での消費額」は、全体で4兆8,315億円です。2019年の国民総生産(名目GNP)は約558兆円なのでその割合は、たったの0.86%しかないのです。こんなゴミみたいなお金で1億人以上もいる国家を支えることなど出来るわけありません。人口4万人のモナコではないのです。

参考までにその消費額の内訳は以下のようになっています。(出典:観光庁)

私たちが日々テレビ報道で見ている欧米先進国からの観光客の日本経済への貢献度など本当に僅かなことが分かると思います。今もテレビでイギリスやフランスでマスクの着用で訪日が躊躇されていると報道していますが、今の日本にとっては本当は一部の欧米人の「くだらない意見」などどうでもいいのです。きっと政府はこれらの報道を受け規制を緩めるんでしょうね。その結果、再びコロナが広がったら、今度はマスコミや評論家は手のひらを返し政府を批判。結果的にその対策でまた何千億という税金が消えていくんでしょうね。日本のマスコミは「マスゴミ」どころか、悲しいかなSNS世界にはびこっている「詐欺集団」と同じように自分たちの利益のため(=視聴率アップのため)には何でもする「ブラック企業集団」に成り下がっています。

日本への外国人旅行者数はどのくらいが上限?

さて、ここでちょっと目線を変え、世界各国のインバウンドの現状を見てみます。

いったい世界で一番外国からの旅行者数(観光客)が多い国はどこでどのくらいの旅行者数があるのでしょうか?
下のグラフは国連世界観光機関(UNWTO)が発表しているコロナ前の2019年の「世界の入国者数上位20ヵ国」です。

★フランス、チェコは2018年の数値

世界一の観光国はフランスです。うなずく人も多いと思いますが、人口6,700万人のフランスにはそれ以上の9,000万人近い観光客がきているのです。ただ、現在のEU域内は国境を越えたのにも気付かないほど自由な行き来が可能なので、一般的に考えるならば3位の米国が現在の№1の観光国と考えていいと思います。すると米国の人口は3.3億人で年間の旅行者数は8,000万人弱。この公式を日本に当てはめると、人口1.26億人×0.24=3,024万人。実際の2019年の日本への旅行者数は3,188万人なのでコロナ前の人数がほぼ上限と考えることもできるのではないでしょうか?ただ、欧州のようにアジアの近隣国内で行き来が自由化すれば話は変わりますが・・・(そんなことはあまりにも恐ろしくて誰も好まないと思うので、アジア地域での渡航の完全自由化は20年や30年では実現しないでしょうね😅)。

では、年間3,000万人の旅行者数でいったいどのくらいまで旅行者から経済収入が得られるのだろうか?下の表は国連世界観光機関(UNWTO)が発表している「外国人観光客からの収入上位国」です。

これを見ると、トップは旅行者数1位のフランスではなくダントツで米国が1位なのです。その理由はラスベガスに代表される「カジノ」の存在です。同じようにカジノがある国は旅行者数の割に収入が多くなっています。まあ、日本政府もそれに習い「カジノ解禁」を強引に推し進めようとしていますが、建設予定地の住民から大反対されその多くは頓挫しているのが現状です。

一見すると米国の2,000億ドル(=26兆円)近い金額は凄いように見えますが、冷静に考えると米国のGDPは約21兆ドルなのでやはり1%未満しかなく米国経済全体から見るとゴミのような存在なのです。また、観光立国のように思えるフランスですら、観光収入はGDPの1.9%しかないのです。

もうお分かり頂けたと思いますが、それなりの経済規模を持つ先進国が観光で立国していくなど有り得ない夢物語なのです。

一体日本政府は観光立国のためにいくら注ぎ込んだのだろうか?

下の表はここ14年間の観光庁の予算推移です。(単位:億円、Gotoトラベル予算は含まれていません)

これを見ると円安で外国人旅行者数が2015年以降爆発的に予算が増えているのがわかります。そう、安倍政権が2期目に入ってから無茶苦茶な予算となったのです。観光庁も人が急増するわけではないので、ほとんど政府の言いなりにお金をばら撒いたのです。その内容を調べようとしたのですがよくわかりませんでした。きっと安倍政権が闇に葬ったのでしょうね。本当にひどいものです。

年度2016201720182019202020212022
予算額200.1210.3248.0665.9680.91061.71425.6
年度2009201020112012201320142015
予算額62.6126.5101.5100.096.698.199.1

ということで、この15年あまりの間に5,000億円近い大金が、ほとんど国の為にならない「観光立国」の言う名の下で使われたのです。まあ、自民党の重要な支持基盤である旅行&運輸業界は大喜びしてるのでしょうが・・・。

何故「観光立国政策」は最悪の政策なのか?

さしたる苦労もせず、外国人旅行者バブルでいい思いをした地方。最近のTV報道を見ていても、「外国人旅行者が戻って来ることだけが願い」とか「補助金だけが頼り」こんな神頼みのような情けない声ばかりです。仮にコロナの影響がゼロになっても日本は観光収入だけでは全然やっていけないのです。あと数年もすれば、地方同士での限られた杯の取り合いで夕張市のように破綻するのが日常茶飯事になっているのでしょう。自分が学生時代よくスキーに行ったニセコ。今やリッツカールトンやハイアットなどが立ち並び日本人庶民など近づけない。超高級リゾート化してしまいました。でもコロナでもう2年以上も閑古鳥すら近づかない土地となっています。ニセコ町の破綻も時間の問題でしょう。

多くの地方が活性化するには「観光産業ではなく世界に通用する独自産業」の育成なのです。そのいい例が新潟県の燕三条や愛媛県の今治などです。

国があぶく銭で稼ぐような観光収益を地方再生策として勧めるなど、まさに無能政府がやる最低の政策です。

そろそろ「観光立国実現」のような詐欺話にお金をつぎ込むのでなく、以前のように「技術立国ニッポンの復活」にお金をを使って欲しいものです。日本の将来のためには、技術、特にIT技術音痴の今の政治家や官僚は全員引退させるべきでは?

皆さんはどう思いますか?

 

 

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