大学生の親の所得低迷と求められる高等教育の無償化

ハーバード大

文科省の発表によると,2015年度の私大の平均年間授業料は86万8447円で,過去最高を記録したそうです。国会でも「高等教育の無償化」が議論されていますが、もともと世界的に見ても「授業料が高い」ことで有名な日本の大学。
そこで今回は、親世代の所得の推移と大学の授業料推移を見てみました。

親の負担がどんどん大きくなる日本の大学

下の表は、世帯主が40~50代の世帯(=大学生の親世代)の年間所得の中央値と国公私立大学の年間授業料の1995年から2015年までの推移を見たものです。

 

大学授業料推移※黄色は期間中の最高値,青色は最低値

これを見るとわかる通り,「親世代の所得」はピーク(96年)の752.4万円からどんどん下がり続け、2015年にはピーク時の115万円の減で85%水準の637.7万円にまで減ってきています。
その一方で,「大学の授業料」は年々上昇しており、1995年と2015年を比べると,国立は8.8万円,公立は9.7万円,私立は14.0万円の増、約20%増です。
きっと少子化の時代の中で、子どもの数が減少し続け、結果的に大学生の数も減り、授業料アップを続けなければ大学を維持していけなかったのでしょう。

その結果、親世代の所得に占める大学の授業料の割合は、1995年には6-9%だったのが、2015年には10-14%に上がっているのです。

近年話題になっている大学生のブラックバイトや奨学金返済地獄の背景には,このような「追い詰められた親世代」の事情があるのです。
先進国である日本で、こんなことがあっていいのでしょうか?

求められる高等教育の無償化

教育基本法第3条は「教育の機会均等」について定めていますが,それは初等・中等教育のみならず,高等教育にも適用されます。

第3条 (教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

たとえ大学のような高等教育でも、子どものが家庭の経済条件で「教育を受ける機会」が左右されることがあってはならないのです。つまり、「家の経済事情が苦しいので大学に行けない」ということがあってはならないのです。
近年、国会や政府でも、この問題がようやく認識されてきたようで,大学の授業料無償化について盛んに議論されています。

世界に大きく遅れている日本の教育行政

海外の先進国の高等教育への公的サポートの現状を見てみると、日本がいかに遅れているかがわかります。

■日本

・授業料・年額(円):535,800
・給付制奨学金:無、受給学生割合:0.0%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →初年度納付金は、国立は入学料と授業料で約82万円(標準額)、私立は施設整備費も加算して約131万円(平均)。国による給付制奨学金はない。

■ノルウェー

・授業料・年額(円):無償化
・給付制奨学金:有、受給学生割合:100%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →全学生が奨学金を受給できる。給付額は、一人暮らしの場合は月額111,200円、親と同居は月額17,300~47,900。障害のある学生などは追加あり。平均額は年約130万円。

■スウェーデン

・授業料・年額(円):無償化
・給付制奨学金:有、受給学生割合:67.0%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →公設私立も国公立と同じで無償。社会経済的状況を要件とする奨学金があり、給付額は月額43,600円(上限額)。取得単位数や学生自身の収入などに応じて減額される。

■ドイツ

・授業料・年額(円):無償化
・給付制奨学金:有、受給学生割合:25.0%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →2008年までに7州で有償となったが、再び無償化が広がり、2014年冬学期以降、全州で原則無償に。社会経済的状況を要件とする奨学金と成績を主な要件とするものがある。

■フランス

・授業料・年額(円):26,500
・給付制奨学金:有、受給学生割合:34.7%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →登録料と健康診断費がある。大学に次ぐ規模のグランゼコールの負担は年額80,000~1,400,000円。社会経済的状況を要件とする奨学金(最大年額777,600円)がある。

■イタリア

・授業料・年額(円):167,800
・給付制奨学金:有、受給学生割合:8.0%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →社会経済的状況を主な要件とする奨学金と成績を主な要件とする奨学金がある。前者の給付額は年額270,300~717,100円(2014/15年度)。

■オーストラリア

・授業料・年額(円):408,600
・給付制奨学金:有、受給学生割合:25.2%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →①24 歳以下が対象の若者手当、②25 歳以上が対象のAustudy、③先住民が対象のABSTUDYの連邦政府の3 つの主要な奨学金は、いずれも社会経済的状況が要件。

■イギリス

・授業料・年額(円):出世払い
・給付制奨学金:有、受給学生割合:48.7%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →4つの地域で異なる。スコットランドは無償。イングランドは平均で1,523,200円で出世払い。社会経済的状況を主な要件とし、年額最大590,600円の奨学金がある。

■カナダ

・授業料・年額(円):570,800
・給付制奨学金:有、受給学生割合:35.1%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →主要な連邦政府の奨学金は社会経済的状況を要件とし①低所得世帯に月額23,900円②中所得世帯に月額9,600円を給付する。家計の教育資金積立への支援制度もある。

■アメリカ

・授業料・年額(円):879,800
・給付制奨学金:有、受給学生割合:47.6%
・国公立大学などの授業料や給付制奨学金制度の概要など
 →授業料の額は、4年制国公立機関における州内出身者の平均。奨学金の値は、連邦政府の奨学金の4年制機関における受給率。平均給付額は465,200円(2011/12年度)。

これからますます少子高齢化が進み、様々な問題が吹き出てくる日本。
国会も行政もいつまでも「森友学園問題」や「加計学園問題」の不毛な議論をやめ、日本の将来をもっと長い目で真剣に議論して欲しいものです。
国会は、そば屋じゃないんだから、「かけ」「もり」はもう十分!

  ▶▶▶ 奨学金制度などの「教育にカネを使わない国ニッポン」
  ▶▶▶ 日本の将来人口と高齢化の将来像
  ▶▶▶ 避けて通れない「2025年問題」
  ▶▶▶ 短大や専門学校の鞍替えで4年制大学の数は急増
  ▶▶▶ 所得の二極化が進み中間層が崩壊

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