「日大アメフト部問題」の関係で、最近急に日の目を浴びた「私学助成金」ですが、私たち一般国民のほとんどはその存在すら知らなかった人が大半だと思います。自分も一応大卒ですが、今回の報道を聞くまでは全く知りませんでした。
そこで今回はこの「私学助成金」について詳しく調べてみました。結果、開いた口が塞がらないぐらい「国の高等教育関連政策のでたらめさ」にあらためて呆れ返ってしまいました。
そもそも「私学助成金」って何?
「私学助成金」は正式名称「私立大学等経常費補助金」と言い、なんと50年以上も前の1970年(昭和45年)からずっと続いているそうです。その目的は・・・
「私立大学等の教育条件の維持向上と学生の修学上の経済的負担の軽減を図り、私立大学等の経営の健全性を高めること」
となっており、管轄官庁は文科省です。そのため文科省サイドが各私立大学ごとに決めた補助金額を毎年大学サイドに交付しているのです。ちなみに昨年度(令和4年度)の交付金額は2,980億円、交付学校数は855校(大学583校、短期大学270校、高等専門学校2校)だそうです。なお、この制度が始まった昭和45年度からの総交付額は、驚くなかれて13兆6,075億円だそうです。
交付金額トップは早稲田大学!
このような私学助成金ですが、その交付金額は大学によって大きな差があります。下の表は令和4年度の交付金額トップ20です。 ※交付金の単位は千円
順位 | 学校名 | 交付金額 | 学生総数 | 学生一人当たりの交付金額 |
1 | 早稲田大学 | 9,045,030 | 46,169 | 196 |
2 | 慶応義塾大学 | 8,396,431 | 33,356 | 252 |
3 | 昭和大学 | 5,981,467 | 3,139 | 1906 |
4 | 立命館大学 | 5,966,821 | 34,079 | 175 |
5 | 順天堂大学 | 5,737,158 | 6,779 | 846 |
6 | 東海大学 | 5,277,063 | 28,566 | 185 |
7 | 北里大学 | 4,150,285 | 9,337 | 444 |
8 | 近畿大学 | 4,132,919 | 35,444 | 117 |
9 | 福岡大学 | 3,652,516 | 20,106 | 182 |
10 | 東京理科大学 | 3,521,897 | 19,697 | 179 |
11 | 帝京大学 | 3,478,864 | 22,639 | 154 |
12 | 東京慈恵会医科大学 | 3,365,343 | 1,086 | 3099 |
13 | 関西大学 | 3,351,565 | 29,699 | 113 |
14 | 藤田医科大学 | 3,105,768 | 2,763 | 1124 |
15 | 法政大学 | 2,949,093 | 28,913 | 102 |
16 | 日本医科大学 | 2,944,735 | 939 | 3136 |
17 | 東洋大学 | 2,841,084 | 30,484 | 93 |
18 | 明治大学 | 2,746,908 | 33,917 | 81 |
19 | 埼玉医科大学 | 2,664,348 | 1,752 | 1521 |
20 | 自治医科大学 | 2,594,191 | 1,332 | 1948 |
1位は早稲田大学でその額は約80億円で、在学学生当たりでみると19.6万円/人です。現行の「子育て支援金」が月額5万円/人であることを考えるとかなり大きな金額です。しかも、これは奨学金のように学生への支援金ではなく、大学を運営する法人に支給されるのです。
その使い道は・・・一応管轄官庁である文科省がチェックしているようですが、事実上大学サイドのやりたい放題のようです。まあ、「子育て支援金」がパチンコ台や居酒屋に吸込まれるのと同じですね。しょうもない親やしょうもない大学にお金を渡しても「子どもや学生の何の支援にならない」ということです。別に早稲田やここに出ている大学がそうだと言っているのではなく、日大など一部のガバナンス機能にかけたブラック大学のことを言っているのです。ちなみに日大は、令和2年度には私立大で2番目に多い約90億円の私学助成を受けていましたが、その後アメフト部の不祥事により「交付停止」が続いています。
話を戻しますが、皆さんは上の表には学生数が極めて少ない「医学系の大学」が多いと思いませんか?そうなんです、昔からの文科省の支援は医学系に偏っているのです。いくらなんでも、学生一人当たり300万円はその裏には戦後の「日本医師会」と「自民党」のながーい癒着関係があると言われていますが・・・。
文科省の犯罪とも思える大失策
下のグラフは明治以降の大学進学率等のかなり珍しいグラフで出典は昔の旧文部省(現文科省)です。
これを見ると、自分が生まれた1960年(昭和35年)頃の大学(4年制)進学率は、僅か10%程度でしたがその後1975年(昭和50年)頃までは順調にアップし25%前後で落ち着きました。この上昇の背景には「高度経済成長期」だったことがあります。個人的には「人には向き不向きが必ずあります。大学進学率も10人に一人から4人に一人にアップ、まあ丁度いい湯加減では?」と思います。
しかしなぜか1991年(平成3年)頃から再び上昇し始め10年後の2001年には40%を超えるのです。その理由は、「バブル崩壊後の経済低迷下」で何とか省のポジションを維持しようとして強引に行った政策(=欧米先進国並の大学進学率達成)です。時代はもはや高度経済成長期ではないのです。それどころか「人口減少とマイナス成長」が見え始めいた時に「大学の数を増やしまくり補助金をバラマキ続けた」のです。その結果、多くの短大や専門学校は看板を4年制“大学”に掛け替えたのです。結果的に1990年から2010年の20年間で日本の大学数は不景気下しかも子供の数は減っているにもかかわらず、507校から778校にまで膨れ上がったのです。もうお分かりだと思いますが、「短大生や専門学校生」と呼ばれていた人達が「大学生」と呼ばれるようになり、大学進学率は急上昇したのです。下のグラフでもその証拠が短大生の数に如実に現れています。
悲惨な日本の大学の国際的評価
このようにでたらめな文科省の政策の結果、日大のような腐り切った大学が蔓延すると同時に、日本の大学全体のレベルが低下してしまったのです。下の表はイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が発表した「THE世界大学ランキング2024」です。
順位 | 大学名 | 国・地域 |
---|---|---|
1 | オックスフォード大学 | イギリス |
2 | スタンフォード大学 | アメリカ |
3 | マサチューセッツ工科大学 | アメリカ |
4 | ハーバード大学 | アメリカ |
5 | ケンブリッジ大学 | イギリス |
6 | プリンストン大学 | アメリカ |
7 | カリフォルニア工科大学 | アメリカ |
8 | インペリアル・カレッジ・ロンドン | イギリス |
9 | カリフォルニア大学バークレー校 | アメリカ |
10 | イェール大学 | アメリカ |
11 | チューリッヒ工科大学 | スイス |
12 | 清華大学 | 中国 |
13 | シカゴ大学 | アメリカ |
14 | 北京大学 | 中国 |
15 | ジョンズ・ホプキンス大学 | アメリカ |
16 | ペンシルベニア大学 | アメリカ |
17 | コロンビア大学 | アメリカ |
18 | カリフォルニア大学ロサンゼルス校 | アメリカ |
19 | シンガポール国立大学 | シンガポール |
20 | コーネル大学 | アメリカ |
詳しい説明は省略しますが、上位20校に中国やシンガポールの大学はランクインしているのに日本の大学は1つも入っておらず最上位は東京大学で29位です。ちなみに100位までを見てみても東大と京大の2校だけなのです。一方で中国(含む香港)は12校、韓国ですら3校もランクインしているのです。悲しい限りです。
このように世界的に見ると日本の大学は極めて評価が低いのです。このような状況を招いた原因の多くは文科省の内向きでその場しのぎのでたらめ政策にあるのは否めません。現代日本で大学進学率を上げて何のメリットがあるのでしょうか?
また、詰め込み教育の傑作品「東大生」が、しょうもない娯楽TV番組で詰め込み度合いを競い合っているのを見るたびに、また国会で東大や京大卒の官僚や官僚出身の議員の話を聞いていると、「今の文科省の政策ままでは、完全に税金の無駄遣いだ。私学助成金も国立大学もなくしてしまえ!そのお金をもっと国の将来に役立つことに使え!」と悶悶と考えている今日この頃です。