「ドイツに抜かれてしまった日本の名目国内総生産」の本当の意味

社会・経済

国際通貨基金(IMF)が公表した最新の経済見通しによると、日本のドルベース名目国内総生産(GDP)が2023年にでドイツを下回り、世界3位から4位に転落するそうです。具体的には2023年の日本の名目GDPは前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)で、これに対しドイツは8.4%増の4兆4298億ドルが見込まれているそうです。なお、1位の米国は日本の6倍で26兆9496億ドル、2位の中国は同4倍で17兆7009億ドルだそうです。日本の最盛期の1990年にはトップの米国の半分以上(3位のドイツの2倍弱)もありダントツの2位たのに・・・。2010年には中国に抜かれ3位転落、そして遂にドイツにも抜かれてしまったのです。円安の影響があるとは言え、まるで坂道を転げ落ちるように日本は世界から落ちおぼれていっているのです。

そこで今回は日本のドイツのここ30年間の歩みについて見てみました。

グローバル化の波に乗れたドイツと乗れなかった日本!

多くの日本人は忘れていたと思いますが、日本がその反映に浮かれていた1990年は実はドイツが再統一を果たした年なのです。ボロボロになっていた旧東ドイツを受け入れたドイツ経済は2000年ごろまでは非常に苦しんでいました。日本はと言うとまだまだ「夢をもう一度!」と甘い考えでどんどんガラパゴス化していったのです。そして2009年の「リーマンショック」と2011年の「東日本大震災」を迎えるのです。
ご存知の通り、東西冷戦終結後の2000年後の世界経済は米国を中核にした“グローバル化の流れ”に乗って発展してきました。下のグラフはドルベースのドイツと日本の名目GDP推移を表したものです。

日本とドイツのGNP推移

このグラフでは日本はかなり大きく上下していますが、これは為替とデフレの影響で実は円ベースの実質GDPではほとんど変わっていません。一方ドイツは地味ですが着実に増えており、2000年と2025年を比べると、日本は減少しているのにドイツは実に2.5倍に増えているのです。
さらにこの間、ドイツは再統合で抱えてしまった莫大な国家債務までも、20年ほど前から地道に続けてきた財政再建策で財政黒字化により大幅に改善しているのです。

参考記事)→日本はドイツのように真剣に財政再建に取り組まなければ未来はない?

一方日本はと言うと、自民党政権(特に安倍政権)はなんだかんだ理屈を付け、原則憲法で禁じられている赤字国債を発行し続け、遂には歳入の1/3が借金、歳出の1/4が借金返済となっているのです。先進国の中でこんなでたらめな国など一つもありません。そのため、世界中の国々がインフレ抑制のために公定歩合を上げているのに、日本だけが金利を上げると借金が返せなくなる(デフォルトで国家破綻)ので公定歩合を上げられないのです。その結果、益々円安が進み物価が上がり我々庶民の生活が苦しくなるのですね。

労働生産性を大幅に上げなれなければ日本の転落は続く!

日本はどう考えても、今後何世紀もの間は発展途上国のように人口ボーナスのような時代は来ません。となれば、GNPを上げる方法は次の2つしかありません。

①労働生産性を上げる
②円の価値を上げる

②については日本経済が強くなれば自然とマーケットが導いてくれるものです。問題は①です。下のグラフは「G7各国の労働生産性を比較」したものです。

今さらいうことではありませんが、日本だけが恐ろしく低いのです。とてもG7とは言えないレベルでドイツの60%しかないのです。政府は一生懸命「労働生産性を上げろ」と言っていますが、今の政策では無理でしょう。なぜなら、日本はまだ当分の間は社会を維持していくために労働力不足に対応せざる負えないため、労働者の高齢化とビジネス経験の乏しい女性労働者の増加が続くので、社会全体の労働生産性は上がるどころか下がると考えるのが普通ではないでしょうか?

「八方美人」の政府は国を滅ぼすだけ!

人間というものは、年を取ると自然と若い頃とは違い無理はしなくなるものです。また物事にプライオリティを付け、取捨選択をするものです。「選挙に勝つために」何でもかんでも手を出す今の政治は、歴史上いくつもの国家を滅亡へと追い込んだ衆愚政治あるいはポピュリズム(大衆政治)の典型ではないでしょうか?

今の日本は後期高齢者直前の老人と同じです。しかも“莫大な政府債務”という重い生活習慣病を抱えているのです。早く、ドイツのように中長期的な視点に立って「政策の取捨選択」を実施し、本当に重要なことに戦力(人材と金)を集中しなければ太平洋戦争と同じように奈落の底まで転がり落ちてしまうでしょう。

日本国民はバカではありません。ドイツのケンメル元首相のように、厳格な数字を基に真剣に国民に説明すれば、国民は自分にとってに辛い政策でも受け入れてくれるのではないでしょうか?
このまま国内でも海外でも“甘いアメをばら撒く”だけの政治を続けていたら、近い将来確実に日本は滅びてしまうでしょう。

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