都心部のバリアフリー化推進に大きく貢献した東京オリンピック・パラリンピック

片麻痺ライフ

自分は、昨年末にWhill C2という電動車椅子を手に入れて以来、ちょくちょく都心の方に出かけるようになりました。Whill C2を手に入れる前は、介助してくれる人がいないと一人では外出することが出来なかったので、都心どころか自宅から出ることがほとんど無い、まるで“ひきこもり”のような生活をしていました。

しかし、今では「来週はどこに行こうか?」と楽しみのある生活に一変しました。

そこで今回は、Whill C2を使った都内散策に不可欠である鉄道網のバリアフリー化について色々調べてみました。

東京オリンピック・パラリンピックで急ビッチに進展!

もともと、日本で鉄道網のバリアフリー化が本格的に進んだのは、20年程前の2000年(平成12年)に交通バリアフリー法という法律が施行されてからのようです。その背景には、2002年の日韓共催のサッカーワールドカップ開催があるようです。
その後、2006年には高齢化社会の到来を睨み、建築物も含めたトータル的なバリアフリー社会の実現を目指したバリアフリー新法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が施行されることとなりました。
さらに、2014年に“2020東京オリンピック・パラリンピック”の開催が決定してからは、首都圏を中心に着々と鉄道網のバリアフリー化が進められていたようです。

鉄道網のバリアフリー化というと視覚障害者のための黄色い点字ブロックやホームからの転落防止するためのホームドアが有名ですが、車椅子利用者の自分としては、エレベーターの設置ホームと車両の間の段差と隙間の解消が最大の関心事であります。
首都圏に限ってみると、自分の感覚では、エレベーターについてはJR・私鉄・地下鉄共に既にほとんどの駅で完備されているような気がします。まあ、エレベーターに関しては車椅子利用者だけでなく、ベビーカー利用者や大きな旅行カバンを持つ旅行者さらにはキャスター利用の高齢者などたくさんの人のニーズがあるから、きっと整備を急いだのでしょうね。

もう一つのホームと車両の段差と隙間の解消の方は、まだまだのような気がします。一般の方にはこのホームと車両の段差と隙間は大した問題でもないと感じている人も多いと思いますが、車椅子で自走している者にとってはこれが電車利用への非常に大きなバリアになっているのです。
この問題に関しては、オリンピック・パラリンピックまで2年となった2018年になってからようやく国土交通省が重い腰を上げ、検討会を立ち上げると同時に実証実験等を行い、2019年10月に車椅子利用者が単独で乗降できる目安値として「段差3㎝、隙間7㎝」というガイドラインを発表しました。なお、実証試験の結果からは段差2cm・隙間5cm が理想的としているそうです。実際Whill C2を使い様々な段差走破にチャレンジしている自分から見ると、Whill C2なら「段差3㎝、隙間7㎝」は問題なくクリアできますが、前輪が15cm程度で簡単に横を向いてしまう自走式車椅子の場合は単独でクリアするのは相当難しいような気がするんですけど・・・。国サイドも、どうせ関与するなら中途半端な目標ではなく、最初から理想のガイドラインを選択すべきだと思うんですけど!

具体的な段差・隙間対応方法と対応状況は?

自分を含め多くの方は「いったい、どうやってあのバラバラな段差や隙間をなくすんだろう?」と首をかしげていると思いますが・・・、調べて見るとビックリ。非常に手間がかかる完全なに個別アナログ対応でした。具体的には国土交通省が提示している以下の説明図をご覧ください。

ホームと車両の段差と隙間の解消

  1. 対策前のホームと電車ドアの段差と隙間を計測する
  2. まず段差目標に合わせてスロープのある床材等を設置する
  3. 次に隙間目標に合わせてホーム先端に櫛状ゴムを取り付ける

こういった感じで、ドアごとにオーダーメイドで対応するそうです。かなり大変そうですね。

ホームと車両の段差と隙間の解消実例1

グレーの台形の部分がかさ上げされた部分です。

ホームと車両の段差と隙間の解消実例2

この角度から見ると、かさ上げされた部分や先端に取り付けられた櫛状ゴムがよくわかります。

想像以上だった地下鉄銀座線のバリアフリー化!

では、実際には今現在でどのくらい「ホームと車両の段差と隙間の解消」は進んでいるのでしょうか?
これについては自分も非常に興味があったので、色々と都心を通る鉄道のバリアフリー化の進展具合を調べてみました。まず最初は地下鉄です。

自分も身体が不自由なる前までは毎日お世話になっていた地下鉄。今、都内を走る地下鉄を新ためて調べてみると、なんと東京メトロ(昔の営団地下鉄)が9路線180駅、都営地下鉄が4路線106駅で、総計13路線286駅もあります。はっきり言って車椅子利用者の自分としては、地下鉄のバリアフリー化が進めば、都心での移動ついては何の問題もなくなります

【東京メトロ全9路線名】
銀座線、丸ノ内線、千代田線、日比谷線、東西線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線
【都営地下鉄全4路線名】
浅草線、三田線、新宿線、大江戸線

どうやら東京メトロの方では、ホームと車両の段差と隙間の解消については、銀座線、丸ノ内線、千代田線の駅及びオリンピック競技会場最寄り駅を他の駅より優先して整備を進めているようです。また、全てのドアでバリアフリー化を実施するのではなく、列車の前方と後方の基本2ヶ所のドアのみバリアフリー化を進めているようです。
ちなみに日本最古の地下鉄である銀座線は、以前は最もバリアフリー化が遅れていて車椅子での利用は不可能でしたが、昨日都心散策がてらに利用してみたところ、「えっ、これほんとに銀座線の駅?」と思うぐらい綺麗になり、バリアフリー化が図られていました。

銀座線渋谷駅

驚いたことに、銀座線の渋谷駅は宮益坂入口に出来たヒカリエの3Fにあり、とんでもなく綺麗になっていました。

 

銀座線渋谷駅2

バリアフリー化が図られているドアは、ホームドアの壁のところにピンク色+車椅子マークが付けられているので一目でわかり安心です。

 

銀座線のバリアフリー1

電車の中側から撮った写真です。まるでオフィスのエレベーターの乗り口ような感じです。

 

 

銀座線のバリアフリー2

この写真でもわかるように、国交省のガイドラインの「段差3㎝、隙間7㎝」よりはるかにバリアフリー化しています。さすがニッポン!

<銀座線での「ホームと車両の段差と隙間の解消」状況 (2020年12月時点、出典:東京メトロ)>
※どうやら「ing状態」のようで、昨日自分が乗った時はさらに多くの駅で整備されていました。

■ 浅 草 方 面

駅名乗車場所①乗車場所②
1号車の
2号車寄りのドア
6号車の
運転席寄りのドア
渋谷
表参道
外苑前×
青山一丁目×
赤坂見附×
溜池山王×
虎ノ門×
新橋
××
銀座××
京橋 ×
日本橋××
三越前××
神田
末広町
上野広小路×
上野××
稲荷町


田原町×
浅草×

■ 渋 谷 方 面

駅名乗車場所①乗車場所②
1号車の
2号車寄りのドア
6号車の
運転席寄りのドア
渋谷〇(1番線は×)
表参道
外苑前×
青山一丁目
赤坂見附×
溜池山王×
虎ノ門×
新橋
銀座××
京橋× ×
日本橋×
三越前××
神田
末広町
上野広小路×
上野××
稲荷町


田原町×
浅草×

もう一つの都営地下鉄の方ですが・・・公表されているデータを見る限り、東京メトロに比べやや遅れているような気がします。近いうちに自分が以前よく利用していた、都営最古の地下鉄である浅草線を都心散策がてらに見に行きたいと思います。(以前は、空いているもののエレベーターどころかエスカレーターさらほとんどなく、最悪でした。)

いずれにしても、我々車椅子利用者にとっては本当にありがたいことです。

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