先週、財務省から2022年の日本の貿易収支(速報値)が発表されました。その額は-19兆9713億円と1979年以降最大の赤字でした。皆さんもご存知のように、我が国日本は1960年代以降一貫して「資源を輸入し、国内労働力を使って工業製品を作り、それを輸出して稼ぐ」という経済モデルで成長してきました。
「コロナパンデミック」「ウクライナ戦争」「少子高齢化の進展」「円安」など様々な要因が関係していると思いますが、「貿易立国ニッポン」としては一大事のような気がします。
そこで今回は「日本の貿易収支」についていろいろ詳しく調べてみました
戦後日本の貿易収支はどう推移してきたのだろうか?
下のグラフは1985年から2021年までの日本の貿易収支の推移を表したものです。(単位 :百万US$、出典:UNCTA=国連貿易開発会議)
これを見るとわかるように、2008年のリーマンショックが起こるまでは、ある程度浮き沈みはあるものの我が国はだいたい年1,000億ドル前後の貿易黒字を上げていたのです。しかし、その後は東日本大震災もあり5年近く赤字大が続き、2015年に黒字復帰するものの以前に比べるとその黒字幅大きく縮小してしまったのです。
そして今回発表された2022年は、なんと‐19兆9713億円と過去最大の赤字なのです。冒頭でも述べたように、日米の金利格差拡大に伴1998年以来のう円安ドル高の進行に加え、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原油・天然ガスなどの資源高と食料品高が大きく影響しているようです。
※「円安」で製品の輸出量は増えるかもしれませんが、一方でその製品を造るための輸入材料費やエネルギー費は高くなります。そのため、貿易の収支は悪化してしまうのです。
主要国の貿易収支はどのように推移してきたのだろうか?
世界経済のグローバル化の流れの中で、各国の貿易額は大幅に増大しました。そのような中で2020年における輸出額は、中国が2兆5900億ドル(=日本の4倍)でダントツの1位なのです。一方の輸入の方は、米国がトップで2兆4070億ドル、次いで中国(2兆660億ドル)、ドイツ(1兆1718億ドル)の順。日本は第5位の6355億ドルでした。東西冷戦時のソ連とは違い、もはや世界経済は中国無しでは成り立たないのですね。
では、貿易収支はどのように推移してきたのでしょうか?下のグラフは主要国の貿易収支の推移を表したものです。(単位 :百万US$、出典:UNCTA=国連貿易開発会議)
これを見ると、あらためて80年代から「双子の赤字」で有名な世界最大の貿易赤字国米国の赤字額の巨大さに驚かされます。2021年にはついに10,000億ドル(現在のレートで約130兆円)を超えているのです。いったいどんな経済構造になっているのでしょうか?まあ今回の本題ではないので米国の話はここまでとしておきます。
また、「世界の工場」と呼ばれている世界最大の貿易黒字国中国の2005年以降の黒字額の伸びにも驚かされますが、日本と同じようにエネルギー源や食料の大半を輸入に頼っているドイツのここ15年の安定した大幅黒字には驚かされます。まさにグローバル化経済の中の優等生ですね。
「貿易立国日本」の復活はありえるのだろうか?
皆さんもご存知の通り、経済大国と呼ばれる今の日本を作り上げたのは、自動車や家電製品などの工業製品と半導体や精密機械部品の輸出です。しかし、ここ20-30年の間に事情は大きく変化したのです。そう、中国の台頭とグローバル化に合わせた日系企業の製造拠点の海外移転です。その結果、今の日本は昔のように工業製品の輸出で国家経済を支えていくほど稼げなくなっているのです。更に最悪なのは「技術力」という面でも一部の「世界の工場中国」等に追いつかれつつあるのです。幾つか例を上げると・・・、
・家電やパソコン・携帯電話などのIT製品
→世界シェア上位は中国、台湾の企業ばかりで日本企業はほとんど無し
・半導体や電子部品などのディバイス製品
→世界シェア上位は同じように中国、台湾の企業ばかり
個人的には、これがバブル崩壊後の30年も続いている日本の経済低迷の最大の理由だと思います。
このような状況下で唯一救いなのが自動車分野で、未だに自動車及び関連部品製品分野では日系企業が世界シェアの上位に君臨しているのです。しかしながら、ここ数年の世界レベルでのEV自動車普及拡大や自動運転化の加速傾向を考えると、これらの分野で大きく遅れを取っている日系企業は5年後には急転落しているかもしれません。特に「ハイブリッド技術」にいつまでもしがみついてたトヨタは日本の携帯電話メーカーと同じ様に「ガラパゴス化」してしまうかもしれません。
また、今後の急成長が確実視されているバイオ・医療分野での技術力も、今回のコロナ禍で日本が欧米先進国に大きく遅れをとっていることが露呈してしまいました。さらに最先端技術の集積が不可欠な航空宇宙分野も同じ状況です。
ということで、個人的にはもはや「工業製品による貿易立国日本の復活」はあり得ないと思っています。皆さんはどう思いますか?















