先日、アメリカ・トランプ政権は、オバマ前政権による「核なき世界」の方針から大きく転換し、抑止力を高めるため核兵器の増強や近代化を打ち出した新たな核戦略を発表しました。
その中では、核兵器の使用を「極限状況」に限定するとしながらも、アメリカや同盟国が核を使わない通常攻撃を受けた場合も、核で反撃する可能性を明記しているのです。
トランプ政権「核なき世界」の方針から大きく転換
トランプ米政権は2日、今後5~10年間の米国の核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」を発表した。核攻撃への抑止と反撃に限らず、通常兵器への反撃にも核の使用を排除しない方針を打ち出した。爆発力を抑えた核兵器の開発方針も明記。「核なき世界」をめざして核の役割を減らそうとしたオバマ前政権の方針から転換し、核兵器の役割を広げた。
中国、ロシアによる核兵器の近代化や北朝鮮の核開発により脅威が高まっていることに対応する。トランプ大統領は声明で「核の役割や数を減らすこの10年にわたる米国の努力にかかわらず、他の核保有国は安保政策での核の優位性を増してきた」と指摘。「21世紀の様々な脅威に柔軟に対処する」と表明した。 (出典:日経新聞HP)
そこで、今回は現状の核兵器保有国とその保有核弾頭数について調べてみました。
人類を何度も滅ぼすことのできる核兵器の量
冷戦終結後減少したとはいえ、今なお世界には、推計1万5千発もの核弾頭が存在し、人類を何度も滅ぼすことのできる量の核兵器が存在しているのです。
また、1945年に世界で初めて核実験が行われて以降、全世界でこれまでに行われた核実験は、大気圏内・地下含めて合計2058回です。その国別の内訳は・・・、
1位 アメリカ 1032回、
2位 ソ連 715回
3位 フランス 210回
4位 中国 45回
5位 イギリス 45回
6位 北朝鮮6回
7位 インド5回
8位 パキスタン 2回
それにしても、国連安全保障会議の常任理事国である5ヶ国の回数は凄いですね。
そして2017年9月現在、世界に核兵器を保有している国は以下の9カ国。核弾頭数は軍事機密のため、あくまでもストックホルム国際平和研究所SIPRI推定です。
第1位 ロシア 約7,300発
1945年にアメリカの核兵器開発とその威力を目の当たりにしたソ連は、アメリカの後を追い1949年に核実験を成功させました。また、1950年代前半には核融合反応を用いた水素爆弾を開発し、広島に落とされた原爆で3,800個分を一度に爆発させたのと同じ威力を持つ人類史上最大の核爆弾の実験も行いました。
こうした熾烈な核軍拡競争の中で、アメリカとソ連の間では両国が核兵器の数と戦略を一定の水準で制限し均衡を保つことで核戦争を防ぐという考えが生まれました。その結果、冷戦期には米ソ間の交渉を通じて核兵器の数が制限され、やがて冷戦の終結とともに核兵器数の削減に少しずつ進んできました。2011年にアメリカとロシアの間で締結された条約(新戦略兵器削減条約 New START)では、配備されている核弾頭の数を7年以内に1550発まで削減することなどが合意されています。
第2位 アメリカ 約6,970発
アメリカはドイツに先んじて原爆を開発するために、マンハッタン計画と呼ばれる国家プロジェクトを秘密裏に立ち上げました。そして1945年7月、人類史上最初の核実験がニューメキシコ州の実験場で行われました。トリニティと名付けられたこの実験ではプルトニウムを用いた爆発実験が行われました。これは半月後に長崎に落とされる型のもので、ウランを用いた広島型の原爆はその機構が極めて単純で爆発することがほぼ確実であったため、事前に実験は行われませんでした。
こうして始まった核の時代は、米ソ冷戦の中で熾烈な核軍拡競争へと発展し、最盛期には米国が約31,000発(1967年)、ソ連が約45,000発(1986年)もの核弾頭を保有するに至りました。
第3位 フランス 約300発
フランスは1960年代になって核開発を行った後発核兵器国でした。そのため、大気圏内での核実験を禁じた条約ができた後も、フランスは条約に入ることなく大気圏内での核実験を行い続けました。やがて南太平洋での核実験に対する国際的な批判が高まるとしばらくは実験を中断していたものの、1996年にすべての核爆発実験を禁止する条約ができる直前に駆け込みで核実験を行い、国際社会から大きな非難を受けました。
第4位 中国 約260発
中国は核不拡散条約(NPT)上の5つの核兵器国の中では最も最後となる1964年に核兵器を開発しました。それ以降、中国は現在の新疆ウイグル自治区にあるロプノールで45回の核実験を行いました。しかし、中国の核兵器に関しては不透明な部分も多く、多国間での核軍縮を進める上で大きな懸念ともなっています。
第5位 イギリス 約215発
先述のとおり、第二次世界大戦末期にアメリカとともに核開発に取り組んだ英国は、ソ連が核兵器を獲得した後アメリカの技術協力の下で核開発を進めました。主にオーストラリアの核実験場で実験を行い、1952年に核保有国となりました。しかし近年では、核兵器の維持管理と更新に費用が掛かり過ぎるとして議論の的にもなっています。
第6位 パキスタン 約110〜130発
ヒンドゥー教国家のインドからイスラム教地域が独立する形で誕生したパキスタンは、その歴史的背景からインドとは地域において緊張関係にあります。1998年5月にインドが核実験を行った際には、パキスタンもそれに呼応する形で核実験を繰り返しました。また、パキスタンの核開発は北朝鮮の核開発とも密接につながっていることが疑われています。
第7位 インド 約100発〜120発
インドは国際的な核不拡散の枠組みに反対する立場を続け、1974年に平和目的として最初の核実験を行いました。南アジア地域において中国との間に国境紛争などの火種を抱えるインドでは、さらに隣国パキスタンとの緊張関係の高まりも受けて、核開発を支持する国内世論が高まっていました。こうした国内政治状況を背景に、インドは1998年に複数回の核実験を行いました。
第8位 イスラエル 約80発
イスラエルは公式には核兵器を保有しているとも保有していないとも明言していません。四国ほどの小さな国土のイスラエルは、その周囲すべてを緊張関係にあるアラブ諸国にぐるっと取り囲まれているため、核兵器の有無やその数といった手の内を明かさないことによって攻撃されることを防ごうという政策がとられています。しかし実際には、核兵器の保有は公然の事実として国際社会から認識されています。
第9位 北朝鮮 約8発
2006年、2009年、2013年、2016年1月2016年9月、2017年9月の6度の核実験を経て、現在も核開発計画は進行中であると考えられています。北朝鮮は、すでにプルトニウムを用いた核兵器を保有していることに加え、2010年に確認されたウラン濃縮施設ではすでに新たな核兵器数発分の高濃縮ウランが作られたのではないかと見られています。また、6度の核実験を通して、核爆発の能力や核爆弾をミサイルに載せやすくするための小型化の技術などが進んだのではないかと懸念されています。
アジア最大の懸案事項である「北朝鮮の非核化」は本当に実現するのでしょうか?












