みなさんは、黄斑変性症(おうはんへんせいしょう)という目の病気をご存知でしょうか。
この病気、これまでは治療法がなく、しかも時間とともに病気が進行すると、最後は失明してしまう、非常に恐ろしい病気です。ところが、最近この黄斑変性症を、最先端の医療であるiPS細胞を活用した治療法より、完全に治せる可能性が高くなってきたそうです。
そこで今回は、この黄斑変性症と言う目の病気について、詳しく調べてみました。
片目だけ、周りが暗く感じたり、ものが歪んで見える
実は、自分自身も30代後半で右目にこの黄斑変性症を発症してしまいました。また、今年米寿を迎えた親父も、60代にこの黄斑変性症を発症していたのですが、先月、ついに右目の視力を失いました。
ということで、かなりリアリティのある説明ができると思います。
■ 症状
「視界の真ん中が暗く見える、ものが歪んで見える」
これに尽きます。ただ、病気が進行すると、視力も下がり、色もよくわからなくなります。
正常な目 発症した目
ただ、両目で見ていると、この症状は初期の段階では現れません。 どうやら、左右の網膜から送られてくる映像の信号を、脳の方でうまく調整しているそうです。そのため、なかなか初期症状の暗さや歪みは通常気づきません。
自分の場合、目の異常に気が付いたのは・・・、
視力がやや落ち(すでに発症していた黄斑変性症が原因?)メガネを買い替えようとメガネ屋さんに行き、視力検査を片目ずつやった時でした。
視力検査のあの輪っかが、右目だけ丸くなく歪んでいるのです。
その後、大きな病院で様々な検査をし、最終的に黄斑変性症と診断されました。 他の病院にも行ったのですが、医師の回答は「直す方法はない。進行を抑えるだけしか出来ない。」という冷たい回答でした。
なぜ、黄斑変性症になるのか?
実は、黄斑変性症は先天性黄斑変性症(黄斑ジストロフィ)と呼ばれるものと、加齢黄斑変性症(AMD; age-related macular degeneration)と呼ばれる2種類があります。
■先天性黄斑変性症の発症原因
この病気は、遺伝子の異常によるもので、子供の頃から発症するようです。患者数は不明ですが、かなり少ないようです。
■加齢黄斑変性症の発症原因
この病気は、50歳以上の発病が多いと言われ、その原因は長年の喫煙、太陽光による酸化ストレス、食生活の偏り、高血圧・心血管疾患などが挙げられています。
また、遺伝的要素もあるようですが、遺伝する力は弱く、遺伝的に加齢黄斑変性症になりやすい体質の人が、発症に影響する環境のなかで長年過ごすと、病気が誘発されると考えられているそうです。
患者数は、はっきりわからず、推定で50歳以上の1.2%と言われています。まあ、2割とも3割りとも言われている高血圧症や糖尿病と比べると、かなり低い数値ですね。
このような症状が現れる原因は?
この加齢黄斑変性症には、その発症の医学的な原因・症状から見て滲出型と萎縮型(新生血管型)の2種類があるそうです。
ここから先は、専門的な話になるので、公益社団法人日本眼科医会HPにあったわかりやすい説明を引用しながらご説明いたします。
“黄斑”変性症の黄斑って何?
黄斑変性症は、漢字のごとく「黄斑が変性してしまう病気」だそうですが、この“黄斑”って一体何なんでしょうか?日本眼科医会の説明では・・・、
目をカメラにたとえるとフィルムにあたる部分が網膜です(図1)。網膜の中心部分、直径1.5mmの範囲を黄斑といいます。黄斑のさらに真ん中、つまり網膜の中心は中心窩といい、すり鉢のようにくぼんでいます(図2)。
では、黄斑変性症になってしまうと、この“黄斑”はどうなってしまうのでしょうか?
滲出型の場合
滲出型は、黄斑の脈絡膜から網膜に向かって、異常血管が生えてくるものです。異常血管は新しくできた血管なので新生血管といい、もろくて弱く、簡単に出血したり血液中の水分が染み出たりします(図3、図4)。そのために新生血管ができると、黄斑の視細胞が急速に傷んでしまい黄斑の機能は急速に悪化します。
本来、くぼんでいて光を集めるところが、新生血管の影響でデコボコになるため、「視界の真ん中が暗く見える、ものが歪んで見える」ようになってしまうそうです。
また、出血してしまうと黄斑の視細胞が急速に傷んで、視力の急低下や失明(オヤジのケース)の危険性が高いそうです。
まあ、理屈は自分の経験した脳内出血と同じで、出血の周りにある多くの神経細胞は「死んでしまい、2度と元に戻らない」のですね。
萎縮型の場合
萎縮型は、網膜の細胞や脈絡膜が、加齢により老廃物が溜まって栄養不足に陥り、変性し徐々に死んでしまうタイプです。そのために黄斑の機能は、徐々に悪化していくそうです。
期待されるiPS細胞を活用した治療法の現状
自分も、かれこれ20年前の発症後から、必死になって治療法を調べ、いろいろな大病院や専門病院に行きました。ただ、先に述べたように、現状では根本的な治療法はありません。
ただ滲出型の場合、進行を抑えるための治療法は、「レーザー光凝固法」「光線力学的療法(PDT)」などいろいろあります。
でもこれらの治療法は、ある面がん治療と同じで・・・、
「悪い所を切り取ってしまうだけで、またいつ再発するかわかないし、視力も回復しない」と、これまでの何人かも医師から説明を受けています。
しかし、今研究されている「iPS細胞を活用した治療法」は、上記のような治療法とは違い、傷んだ視細胞を取り除き、そこへiPS細胞を移植し、新たに網膜細胞をつくるという画期的な治療法のようです。
(詳しくは下図の理化学研究所の資料w参照して下さい)
※iPS細胞(人工多能性幹細胞)=さまざまな細胞への分化が可能な万能細胞
網膜色素上皮細胞の移植手術
(資料:理化学研究所/先端科学医療財団)
この治療法、2014年9月に、患者自身の細胞から作ったiPS細胞を育てて作製した細胞シートを移植するという世界初の臨床研究を実施し、経過は良好のようです。
さらに今年の前半には、他人の細胞からiPS細胞を作り、冷凍保存した「iPS細胞ストック」を使用する。
このiPS細胞ストックを利用する方法だと、治療を始めるまでの期間が半年に短縮でき、費用は数百万円に抑えられるそうです。
10年後ぐらいには、自分の治療にも使えるようになっていることを期待してます。
たまにはみなさんも、片目だけでまわりを見てみてはどうでしょうか?
早期発見で、進行抑えることも可能と言われています。